こんにちは、しゅみすけです。
日本語と英語は、同じ世界を見ているのに、なぜ違う形で表すのでしょうか。
- 「富士山が見える」は I can see Mt. Fuji.
- 「この道を行けば駅に着く」は This road takes you to the station.
- 「寒い」は I’m cold. と It’s cold. を使い分ける
- 「バスが止まっている」と The bus is stopping. は同じ景色にならない
これらは、単語や文法規則だけの問題ではありません。英語と日本語では、場面のどこを入口にして、何を先に見せ、どのような関係として組み立てるかが異なります。
言語は、目の前の世界をそのまま写す鏡ではなく、何を見せるかを選ぶフレームです。
この記事では、学校文法を否定するのではなく、その規則の奥にある「英語の見え方」を、語順・主語・単語の範囲・時間・情報の並べ方から体系的に整理します。
しゅみすけ(大山俊輔)
日本語を英単語へ置き換えても不自然になるときは、語彙不足とは限りません。日本語で作った景色を、英語のフレームへ並べ直していないことが原因かもしれません。
英会話スクール「b わたしの英会話」・英語コーチング「be:RIZE」創業者
この仕組みを理解すると何が分かる?
英語と日本語の「切り取り方」の違いが分かると、文法事項を別々の暗記項目としてではなく、共通する設計として見られるようになります。
| 疑問 | 見えてくる仕組み |
|---|---|
| なぜ英語は語順が大切? | 位置が「する側・動き・受ける側」を示すから |
| なぜ主語を省きにくい? | 場面を見る出発点を文の先頭で設定するから |
| なぜ物や道が主語になる? | 原因・手段・情報源も出来事の出発点にできるから |
| なぜ日本語訳と意味がずれる? | 単語が切り取る意味の範囲が一致しないから |
| なぜ進行形で意味が変わる? | 出来事の途中へカメラを置くから |
ここでは、このような共通原理を「英語のほうが論理的」「日本語のほうが曖昧」といった優劣では捉えません。どちらも十分に精密な言語ですが、精密さを表す場所が違います。
学校文法ではどう習うか
学校文法では、英語を正確に読み書きするために、主語・動詞・目的語、時制、進行形、文型などの規則を学びます。これは重要な土台です。
- 英語の基本語順はSVO
- 普通の文には主語が必要
- be動詞+動詞のing形で進行形を作る
- 名詞には単数・複数がある
- 語によって目的語や前置詞の取り方が異なる
ただし、形と名称を覚えただけでは、「なぜその場面でその形を選ぶのか」まで見えないことがあります。そこで必要になるのが、話し手が場面をどう捉えているかという視点です。
丸暗記だけでは理解しにくい点
正しい日本語訳が一つあるように感じる
I’m cold. と It’s cold. は、どちらも「寒い」と訳せます。しかし英語では、前者は話し手の体感、後者は周囲の気温を主役にしています。日本語訳が同じでも、英語が映す中心は同じではありません。
主語は「行動する人」だと思いやすい
This book changed my life. や The sign says “No smoking.” では、本や看板が人間のような意思を持つわけではありません。本は変化の原因、看板は情報の出どころとして文の出発点になっています。
文法形式を日本語の時間表現だけで判断する
The bus is stopping. の進行形は、バスが止まった状態ではなく、走行から停止へ向かう途中を見せます。「〜している」という訳だけでは、出来事のどこへカメラを置いたかが消えてしまいます。
英語と日本語は、同じ場面の何を先に見せるかが違う

日本語では、話題や状況が会話の中ですでに共有されていれば、主語を言わずに説明できます。助詞によって語の役割を示し、文末の述語まで聞くことで全体の関係が確定することも多くあります。
英語では、まず主語を置いて場面の出発点を決め、その主語について動き・状態・対象・場所などを前から積み上げます。
ここでの学習者向けの見方
日本語:共有された場面の中で、必要な情報を選んで示す。
英語:場面の出発点を主語で置き、そこから関係を展開する。
もちろん、日本語にも明確な主語があり、英語にも省略や文脈依存があります。ここではすべての文を説明する絶対法則ではなく、学習者が日英の違いを捉えやすくする代表的な傾向として紹介しています。
5つの具体例に共通する「切り取り方」
1.語順は、単語の役割を見せる設計図
日本語では「犬が猫を追いかけた」の助詞が役割を示します。英語では語順が大きな手がかりです。
- The dog chased the cat.
- The cat chased the dog.
同じ単語でも順番を変えると、追う側と追われる側が入れ替わります。英語の語順は単なる並べ方ではなく、出来事の関係を作ります。
2.主語は、カメラを置く場所
「富士山が見える」を I can see Mt. Fuji. と言うとき、英語は知覚する人を出発点にします。一方で、原因や手段に焦点を置けば物も主語になります。
- This book changed my life.:本 → 人生の変化
- This road takes you to the station.:道 → あなたの到着
- The sign says “No smoking.”:看板 → 情報
英語がいつも人を主語にするのではありません。誰・何から場面を展開すると、伝えたい関係が見えやすいかによって主語を選びます。原因・手段を主語にする仕組みは、無生物主語の記事で詳しく解説しています。
3.単語は、辞書の日本語訳と同じ範囲を切り取らない
brother は兄にも弟にもなります。英語で年齢差が重要なら、older brother、younger brother と情報を加えます。
これは英語に情報が欠けているのではありません。日本語の「兄・弟」は親族関係と年齢を一語にまとめ、英語の brother は男性のきょうだいという関係を中心に切り取ります。
同じように、英単語と日本語訳は一対一ではありません。単語を理解するときは、訳語だけでなく「どんな場面の、どの範囲を指すか」を複数の例から確認します。
4.文法形式は、出来事の見せ方を変える
- The bus stops.:習慣・運行上の事実
- The bus is stopping.:停止へ向かう途中
- The bus is stopped.:止まった状態として描く
同じバスでも、出来事を一般的な事実として見るか、途中を切り取るか、結果の状態を見るかで形が変わります。時制や相はカレンダー上の時間だけでなく、出来事をどこから見るかを示します。
5.情報の順番は、聞き手の理解を設計する
英語は必ず結論から話す言語ではありません。ただ、質問への答えを先に示し、その後で理由を加えると、聞き手は話の方向を早くつかめます。
I can’t join today. I have a deadline.
日本語で考えた背景をすべて英訳してから結論へ進むより、短い答えを置いて情報を足すほうが、英語の処理順と相性がよい場面があります。前から組み立てる練習は、英語を主語と動詞から始める4コードでも紹介しています。
実際の会話へ応用する3つの手順
1.日本語の完成文ではなく、場面へ戻る
「どう訳すか」を考える前に、人・物・動き・状態・目的を確認します。
2.何を出発点にするか決める
自分の体感なら I、周囲の状態なら It、原因を見せたいなら物・出来事を主語にできます。
3.主語と動詞の短い骨格から話す
最初から長い一文を完成させず、I think … / I need … / It looks … / This helps … のような骨格を出し、理由や場所を後から足します。
しゅみすけ(大山俊輔)
英語らしい見方は、難しい英文を作ることではありません。場面の入口を一つ選び、主語と動詞で小さく映し始めることです。
英会話スクール「b わたしの英会話」・英語コーチング「be:RIZE」創業者
日本語を介さない処理の練習方法は、英語脳とは?日本語に訳さず英語を話すための作り方、英訳してから話す癖への具体的な対処は英語の語順で話す5ステップで扱っています。
b-cafe.netで個別の疑問を深掘り
ここまでの原理が、実際の表現でどう現れるかは、b-cafe.netの個別記事で確認できます。
語順と情報の並べ方
主語と視点
- This book changed my life. はなぜ「本」が主語?
- The sign says “No smoking.” はなぜ「看板が言う」?
- This road takes you to the station. はなぜ「道」が主語?
- I’m cold.とIt’s cold.の違いは?
- 「富士山が見える」はなぜI can see Mt. Fuji.?
日本語訳と場面
10の疑問をまとめて探したい場合は、b-cafe.netの英語の特徴とは?日本語との違いを語順・主語・単語・音から解説をご覧ください。
学習するときの注意点
英語話者全員が同じ景色を見ると断定しない
言葉の選択は、文脈・文化・個人・目的によって変わります。「英語では必ずこう考える」という心理の断定ではなく、英文の形がどの関係を前面に出しているかを見るための学習モデルとして使います。
日本語を悪者にしない
日本語を介することは、文法理解や正確な確認に役立ちます。日本語を完全に消すことではなく、日本語の完成文を毎回一語ずつ英訳する処理だけに依存しないことが目標です。
イメージだけで正誤を決めない
コアイメージや視点は理解を助けますが、実際の用法、語法、頻度、文脈の確認も必要です。学校文法・辞書・多くの実例と組み合わせて使いましょう。
まとめ|英語は「何を先に見せるか」を文の形にする
英語と日本語は、同じ現実を違うフレームで切り取ります。
- 英語は主語を置き、動き・状態・対象を前から展開する
- 語順が、出来事の中での役割を示す
- 人だけでなく、原因・手段・情報源も主語にできる
- 単語が切り取る意味の範囲は、日本語訳と一対一ではない
- 時制・進行形などは、出来事を見る位置を変える
- 情報の順番は、聞き手に何を先に理解してもらうかを設計する
文法は、理由のない規則の集まりではありません。話し手が何を見せ、どこへ焦点を置き、出来事をどう組み立てたかを伝える仕組みです。
英文に出会ったら、訳語だけでなく、「この文は、場面のどこへカメラを置いているのだろう?」と考えてみてください。別々に見えていた文法事項が、一つの英語の設計としてつながり始めます。



