「英語を話そうとすると、文の最初で止まってしまう」
「言いたいことは頭にあるのに、どの単語から置けばいいのかわからない」
このような方は、単語や文法の知識が足りないとは限りません。日本語の文を最後まで思い浮かべ、それを英語へ変換しようとしているため、英語のスタート地点を決められなくなっている可能性があります。
英語を話すとき、最初に置くのは原則として主語と動詞です。
I work…
She needs…
We went…
まず短い骨格を置き、必要な情報を後ろへ足していく。この順番に慣れると、最初から長くて完璧な英文を作る必要がなくなります。
この記事では、拙著でも紹介している「4コード」という考え方を使いながら、英語の文を主語と動詞から作る練習法を解説します。
英語はなぜ主語と動詞から始めるのか
日本語では、主語を省略しても会話が成立します。
「昨日、仕事のあとに友達と新宿でご飯を食べてきた」
この文には「私は」がありません。それでも、会話の流れから誰の話かを判断できます。また、「食べた」という中心の動作は文の最後にあります。
英語では、同じ場面を次のように置いていきます。
I had dinner / with my friend / in Shinjuku / after work yesterday.
最初に I had dinner と骨格を置き、その後ろへ「誰と」「どこで」「いつ」を足しています。
日本語と英語では、単に単語の並びが反対なのではありません。話し始めるときの情報の出し方が違います。
| 言語 | 話し始めるときの傾向 | 中心になる情報 |
|---|---|---|
| 日本語 | 背景や状況から入り、主語を省くことも多い | 動作や判断が後ろに来やすい |
| 英語 | 誰・何について話すかを先に示す | 主語の直後に動詞を置く |
日本語の完成文を英訳しようとすると、文末の動詞を探し、主語を補い、全体を並べ替える作業が必要です。知識があっても、会話中に処理が間に合わなくなるのは不思議ではありません。
だからこそ、英会話では日本語を並べ替えるよりも、場面を見て「誰が」「どうする」から英語を起動する練習が重要になります。
英語の「4コード」とは?ギターを弾かない人にもわかる考え方
「4コード」は、僕が英会話の仕組みを説明するときに使っている比喩です。
ギターには非常に多くのコードがあります。しかし、初心者が最初からすべてのコードを覚えなければ曲を弾けないわけではありません。
たとえば、ベン・E・キングの名曲『Stand by Me』は、同じ4つのコードを基本に曲が進みます。また、ポップスには少数のコード進行を繰り返して作られた曲が数多くあります。
ギター未経験者向けに簡単に言えば、コードとは複数の音をひとまとまりで鳴らす「手の型」です。指を一音ずつ考えるのではなく、型を押さえて鳴らします。数百ある選択肢を最初から全部覚えなくても、よく使う少数の型を組み合わせれば、一曲を最後まで演奏できます。
英会話も同じです。
単語と文法を無数に覚えてから話すのではなく、よく使う少数のパーツを組み合わせれば、まず会話を始められます。
僕が「4コード」と呼んでいるのは、次の4つです。
- 骨格:主語と動詞を中心に、文の空箱を作る
- コア単語:have・get・take・goなど、簡単な単語を深く使う
- チャンク:複数の単語を意味と音のまとまりで扱う
- 拡張:場所・時間・理由などを後ろへ足す
4コードは、特定の4単語や4つの文法項目ではありません。英語をリアルタイムで処理するための4種類の部品です。
今回扱う「主語と動詞」は、その最初にあるコード①・骨格です。ギターで最初のコードを押さえられなければ演奏を始められないように、英語も骨格が置けなければ、その後ろへ情報を足せません。
英会話で最初に覚えたい3つの骨格

学校では英語の5文型を習います。しかし、スピーキング初心者が最初から5つを同じ濃さで練習する必要はありません。
まずは、日常会話の土台になる次の3つを反射で置けるようにしましょう。
1.SVC|誰が・何が=どんな状態
SVCは、主語とその後ろが「=」で結ばれる骨格です。
- I am tired.(私=疲れている)
- She looks happy.(彼女=幸せそう)
- The room is cold.(部屋=寒い)
「私は昨日残業が長引いたせいで、かなり疲れてしまいました」と全部言おうとせず、まず I am tired. と状態を置きます。
説明が必要なら、その後ろへ足せばよいのです。
I am tired / because I worked late last night.
2.SV|誰が・何が→どうする
SVは、動作が主語の中で完結する骨格です。
- I work.
- He smiled.
- The train stopped.
これだけでは情報が少なく見えるかもしれません。しかし、会話では短い骨格を先に置けることが重要です。
I work / at a small company / in Tokyo.
最初の I work が崩れなければ、勤務先や場所は後ろから追加できます。
3.SVO|誰が・何が→何をどうする
SVOは、主語が起こした動作が、別の対象へ向かう骨格です。
- I have a dog.
- She needs help.
- We discussed the plan.
日常会話では、動詞と目的語の組み合わせが非常によく使われます。
- have + breakfast
- take + a break
- make + a reservation
- get + a message
単語を一語ずつ覚えるより、動詞とその後ろに来るものをセットで使う方が、会話で取り出しやすくなります。
基本動詞の使い方は「英会話で重要なコア単語とは?基本動詞・前置詞・助動詞をイメージで学ぶ方法」でも詳しく解説しています。
主語と動詞から文の骨格を作る5ステップ
ここからは、実際の場面を英語にする練習です。
題材は「今日は仕事が忙しく、昼食を取る時間がなかった」にしてみましょう。
ステップ1|日本語の完成文を作らず、場面を見る
最初に日本語の文章を整えません。
思い浮かべるのは、机に仕事がたまり、時計を見たら昼食の時間を過ぎていた場面です。
「今日は仕事が忙しくて、予定していた昼食を取れなかった」という日本語を一字一句再現しようとすると、英訳作業が始まります。まず映像の中にある小さな事実を一つ選びます。
ステップ2|場面の主人公を決める
次に「誰・何について話すか」を決めます。
この場面なら、主人公は自分なので I です。
英語の主語は、文法問題のために探すものではありません。今からカメラを向ける主人公だと考えるとわかりやすくなります。
ステップ3|主人公の動き・状態を一つ選ぶ
次に、主人公の状態や動きを決めます。
- 忙しかった → was busy
- 仕事がたくさんあった → had a lot of work
- 時間がなかった → didn’t have time
一つの長い日本語に対応する英語を探すのではなく、場面を小さな骨格へ分けています。
ステップ4|主語+動詞を0.5〜1秒で置く
ここで、説明を足す前に骨格だけを声に出します。
I was…
I had…
I didn’t have…
最初は目的語や補語まで一緒に出しても構いません。
I was busy.
I had a lot of work.
I didn’t have time.
大切なのは難しい文を作ることではなく、主人公を置いた直後に、状態や動作を起動することです。
ステップ5|必要な情報だけ後ろへ足す
骨格が出たら、場所・時間・理由などを後ろへ追加します。
I was busy / at work / today.
I had a lot of work / this morning.
I didn’t have time / for lunch.
後ろに足す情報は、最初から全部決めなくても構いません。話しながら思いついた順に追加します。
これが4コードの「拡張」です。
長い日本語は1文で英訳せず、短い骨格へ分ける
英語で止まりやすい方ほど、日本語の一文を同じ形の一文で再現しようとします。
たとえば、次の日本語です。
「昨日は電車が遅れて会議に間に合わなかったので、上司に事情を説明しました」
これを一度に英訳しようとすると、接続詞、時制、語順、適切な動詞を同時に考えることになります。
会話なら、場面を3つに切って構いません。
My train was late.
I missed the meeting.
I explained it to my boss.
日本語の表現を完全に再現してはいません。しかし、起きたことは伝わります。
話せる人は、最初から長い英文を持っているのではなく、短い骨格を前から連続して置けるのです。
慣れた後で、必要なら文をつなげます。
My train was late, so I missed the meeting. I explained it to my boss.
最初から完成版を目指すのではなく、短いコードを鳴らし、その後で組み合わせます。
初心者向け|主語と動詞の「3秒実況」練習
日常生活の中で、目の前の場面を3秒以内に短い英語へする練習がおすすめです。
| 場面 | 最初の骨格 | 後ろへの追加 |
|---|---|---|
| 雨が降り始めた | It’s raining. | It’s raining outside. |
| コーヒーが欲しい | I want coffee. | I want some coffee now. |
| 同僚が電話中 | She is talking. | She is talking on the phone. |
| 電車が来た | The train came. | The train came on time. |
| 夕食を作っている | I’m making dinner. | I’m making dinner for my family. |
練習の順番は次のとおりです。
- 場面を見る
- 主人公を一人・一つ選ぶ
- 状態か動作を一つ選ぶ
- 主語+動詞を声に出す
- 余裕があれば一つだけ情報を足す
一日に5場面で十分です。大切なのは、珍しい表現を増やすことではなく、I am、I have、I need、I went などの簡単な骨格を何度も使うことです。
主語と動詞の練習でよくある5つの間違い
1.主語を文法的に探しすぎる
「この文の主語はどれか」と分析するより、まず場面の主人公を決めます。自分を映すなら I、目の前の電車を映すなら The train です。
2.動詞を日本語訳から探す
日本語の「取る」に対応する英単語を毎回探すと、take・get・haveなどの選択で止まります。場面の動きを見て、覚えている動詞と目的語の組み合わせを使いましょう。
3.最初から長く話そうとする
一息で長い英文を言おうとすると、骨格を置く前に処理が止まります。最初は3〜5語で構いません。
4.書けたら話せると思う
時間をかけて正しい英文を書けても、会話で1秒以内に取り出せるとは限りません。書いた文は、ノートを閉じて場面から言い直します。
5.毎回新しい表現を覚える
練習のたびに新しい単語を使うと、骨格より検索作業が中心になります。同じ主語+動詞を、異なる場面で使い回してください。
主語+動詞で文の骨格を作るところから、be動詞と一般動詞、肯定・否定・疑問、時制、品詞までの学習順は、英会話に必要な英文法はどこまで?大人初心者が短い一文を作る5つのコア文法でまとめています。
骨格ができたら、リライト・英語日記・独り言へ進む
主語と動詞を置く練習は、それだけで完結するものではありません。
- 短いお手本を音読し、骨格を口に通す
- 一部をリライトし、自分の場面へ近づける
- 英語日記で、一場面を短い3文に分ける
- ノートを閉じ、場面から独り言で話す
知識を実際の会話へつなげたい方へ
be:RIZEでは、文法やコア単語を暗記で終わらせず、自分の場面で聞き、話せる処理へ変える練習を設計しています。詳しくはbe:RIZEの学習メソッドと進め方をご覧ください。



