英語の単語帳、文法書、リスニング教材、瞬間英作文、発音教材、アプリ――。
「今度こそ」と思って買ったのに、途中で使わなくなった教材が何冊もある。そんな状態になると、「自分は何をやっても続かない」「教材を見る目がない」と感じてしまうかもしれません。
しかし、教材が合わなかった理由は、意志の弱さや教材そのものの質だけでは決まりません。
目的と内容がずれていた、難易度が今の自分に合っていなかった、必要な技能と練習していた技能が違っていた、使い方が教材の特性に合っていなかった――。こうしたズレが重なると、評判のよい教材でも成果を感じにくくなります。
この記事では、過去に試した教材を「失敗した本の一覧」にせず、次の学習計画に使える情報として整理する方法を解説します。
教材を何冊も試したこと自体は無駄ではない
使い切れなかった教材を見ると、買ったことまで失敗だったように感じるかもしれません。
けれども、一度取り組んだ教材からは、少なくとも次のような情報が得られています。
- どの説明なら理解しやすかったか
- どのくらいの分量なら続けやすかったか
- 読む学習と音を使う学習のどちらに負担を感じたか
- 知識は増えたのに、どの場面で使えなかったか
- 飽きたのか、難しかったのか、効果を感じられなかったのか
これは、次の教材や学習法を選ぶうえで大切なデータです。
まずは「完走できたか」だけで教材を評価せず、何が残り、どこで止まったのかを分けて考えてみましょう。
教材が自分に合わなかった5つの理由
1.学習目的と教材のゴールが違っていた
「英語を話せるようになりたい」という目的で、語彙や文法の教材を選ぶこと自体は間違いではありません。会話にも語彙と文法は必要です。
ただし、知識を確認する教材だけでは、その知識を会話中に素早く取り出し、英語の順番で組み立てる練習までは十分にできないことがあります。
反対に、資格試験の点数を上げたい人が会話表現だけを増やしても、試験で求められる読解速度や出題形式への対応は不足します。
教材のタイトルではなく、実際にその教材を使うと「何ができるようになるのか」を確認することが大切です。
2.現在地より難しすぎた、または簡単すぎた
有名な教材でも、今の自分に難しすぎれば、調べる時間ばかりが増えて反復量が減ります。
一方、簡単に理解できる教材でも、すでに知っていることを確認するだけになれば、「勉強した感覚」はあっても変化を感じにくくなります。
難易度を見るときは、説明を理解できるかだけでなく、
- 音声を無理なく追えるか
- 例文の意味をすぐにつかめるか
- 自分でも同じ構造を使えるか
- 数日後にも再現できるか
まで確認しましょう。
3.伸ばしたい技能と、実際の練習がずれていた
英語力は一枚岩ではありません。
単語や文法の知識、音の認識、聞いた順番で意味を組み立てる処理、自分の意図を英語の骨格にする処理、会話の中で相手に聞き返したり言い直したりする力は、それぞれ関係しながらも同じではありません。
たとえば、単語帳を何周しても長い英語が聞き取れない場合、単語数だけでなく、音を認識する力や、前から意味を保持する処理に課題が残っている可能性があります。
「この教材は英語力全般に効くはず」と考えるより、どの技能を直接練習しているのかを見たほうが、成果を判断しやすくなります。
4.教材ではなく、使い方が目的に合っていなかった
同じ教材でも、黙読する、音読する、音声だけで聞く、例文を入れ替えて話す、実際の会話で使う、では身につくものが変わります。
会話のために例文集を使うなら、意味を覚えるだけでなく、
- 例文の骨格をつかむ
- 主語・動詞・目的語などを入れ替える
- 自分の経験に置き換える
- 数日後に何も見ずに使う
- 会話やオンライン英会話で試す
といった流れが必要になることがあります。
最後まで読んだかより、その教材を使ってどんな処理を繰り返したかが重要です。
5.生活に対して教材の負荷が大きすぎた
内容が合っていても、毎日こなす分量が現実の生活と合わなければ続きません。
仕事や家事が忙しい人にとって、毎日複数の教材を進める計画は、それぞれの切り替えだけでも負担になります。また、一回の学習単位が長い教材は、まとまった時間を確保できない日に開きにくくなります。
「毎日できなかったから自分に合わない」と結論づける前に、量を3分の1にしたら続けられるか、1冊の中で使う範囲を絞れないかも考えてみましょう。
手元の教材を7項目で棚卸しする
これまで使った教材を、次の7項目で一冊ずつ整理してみます。すべての教材を詳しく振り返る必要はありません。時間をかけたもの、途中で止まった理由が気になるものからで十分です。
| 確認項目 | 書き出す内容 |
|---|---|
| 選んだ目的 | TOEIC、会話、リスニング、語彙など |
| 実際の内容 | 読む、聞く、書く、話す、問題を解く |
| 取り組んだ期間 | 何週間・何か月、週何回程度か |
| 楽だった部分 | 理解しやすかった説明、続けやすい単位 |
| 負担だった部分 | 難易度、分量、音声速度、単調さなど |
| 残ったもの | 覚えた知識、習慣、理解できた仕組み |
| 止まった理由 | 難しい、退屈、時間不足、変化が見えないなど |
「止まった理由」は、なるべく具体的に書きます。
単に「続かなかった」ではなく、「一回40分必要で平日に開けなかった」「解説は分かるが会話で使える感覚がなかった」「音声が速く、文字を見ないと内容が分からなかった」と書くと、次に避けるべきズレが見えてきます。
学習法全体も含めて整理したい場合は、前の記事「TOEIC・英会話・コーチングを試しても伸びない人へ|学習歴の棚卸し」も参考にしてください。
教材を「続ける・使い方を変える・保留」に分ける
棚卸しが終わったら、教材を三つに分けます。
続ける教材
目的と内容が合っており、無理のない量で取り組める教材です。
一冊を最初から最後まで進める必要はありません。今の課題に必要な章だけを反復する使い方でも構いません。
使い方を変える教材
内容は役立つものの、読むだけ、解くだけでは目的につながりにくかった教材です。
例文を音声で処理する、自分の話に置き換える、翌日に何も見ず再現するなど、使い方を変えることで再利用できる場合があります。
いったん保留する教材
今の目的や現在地に合わない教材です。
「せっかく買ったから」という理由だけで続けると、本当に必要な練習へ使う時間が減ります。捨てる必要はありませんが、今は使わないと決めることも学習設計の一部です。
次の教材を買う前に決めたい4つのこと
棚卸しの直後に新しい教材を探すと、また評判やタイトルだけで選びやすくなります。購入前に、次の4点を一文ずつ書いてみましょう。
- 使いたい場面:海外出張の会話、オンライン会議、日常会話、試験など
- 止まっている処理:音が取れない、長くなると保持できない、骨格が出ない、語彙が取り出せないなど
- 一日に使える時間:理想ではなく、忙しい日でも確保できる時間
- 変化の測り方:同じ音源を聞く、録音する、実際の会話で試すなど
この条件が決まれば、「人気だから」ではなく、「今の不足を補えるから」という理由で教材を選べます。
市販教材とオリジナル教材は、優劣より設計目的を見る
市販教材には、幅広い学習者が使いやすい、書店で確認できる、価格を抑えやすいなどの利点があります。一方で、一冊の中に試験向け・文語的な表現・口語表現が混ざっていたり、知識の説明から会話での運用までを一冊で担うのが難しかったりすることもあります。
オリジナル教材も、オリジナルであるだけで自分に合うとは限りません。誰を対象に、どの技能を、どんな順番で伸ばすために作られているかを見る必要があります。
詳しくは「英語コーチングで教材を指定される理由|市販教材との違い」で整理しています。
教材選びより先に、止まっている場所を特定する
教材を何冊も試しても伸びなかったと感じると、もっと分かりやすい教材、もっと新しい学習法を探したくなります。
けれども、必要なのは教材の追加ではなく、知識・音・意味・発話のどこで処理が止まっているかを確認することかもしれません。
たとえば、文法や単語の知識がすでにある人なら、知識を増やすよりも、
- 口語でよく使う語をすぐ取り出す
- 英語の骨格で意図を組み立てる
- 音を前から意味につなげる
- 学んだ表現を実際の会話で再利用する
といった練習が必要な場合があります。
教材の冊数を増やす前に、今ある知識と、実際に聞く・話す処理の間にある接続を見直してみましょう。
be:RIZEでは過去に使った教材も確認します
be:RIZEでは、学習計画を作る前に、これまで受けた試験、英会話やコーチングの経験、使った教材、続いた期間、伸びたこと、止まった理由などを確認しています。
過去の教材や学習法を否定して、すべて最初からやり直すためではありません。すでに身についている知識は残しながら、会話に必要な処理との間で不足している接続を見つけるためです。
そのうえで、口語で使うコア単語、英語の骨格をつくるワーク、直感的にアウトプットする練習、リスニングなどを、現在地に合わせて組み合わせていきます。
教材が増え続けているのに次に何をすべきか分からない方は、一度、手元の教材と学習歴を整理するところから始めてみてください。
「何を試したか」だけでなく、「何が残り、どの処理で止まったか」が分かれば、次の一冊を探す前に、次の一歩が見えてきます。
教材選びだけでなく、英語のやり直し全体の入口を整理したい方は、社会人の英語やり直しは何から始めるべきかもあわせてご覧ください。



