『英語耳』は、英語の発音とリスニングを一緒に鍛える定番教材です。「発音できる音は聞き取れる」という考え方を軸に、英語の母音・子音を一つずつ聞き、口を動かし、音の違いを身につけていきます。
発音教材として非常によくできています。ただし、旅行や日常、仕事のちょっとした英会話ができるようになりたい人が、最初から本書だけを完璧に仕上げようとすると、単音練習が長くなり、会話までたどり着けないことがあります。
先に結論を言えば、『英語耳』は英語の個別音を聞き分け、必要な音を補修する教材として優秀です。一方、息・響き・音節・リズムという発声の大枠や、語彙・文法・意味処理まで一冊で完成するわけではありません。
『英語喉』が楽器そのものを持ち替える練習なら、『英語耳』はその楽器で一音ずつ正確に鳴らす練習です。どちらが正しいかではなく、役割と順番が違います。
英会話スクール「b わたしの英会話」・英語コーチング「be:RIZE」創業者
この記事の結論
まず息・響き・音節の流れを整え、その後『英語耳』で聞き分けにくい母音や子音を補修する。最後は単語・短文・会話へ移す。この使い方なら、発音練習が英会話につながりやすくなります。
結論|『英語耳』は個別音を補修する名著
日本語の音の分類だけで英語を聞くと、英語では別の音として使い分けられる二つの音が、同じ音に聞こえることがあります。代表例が L と R ですが、実際には母音や摩擦音などにも、日本語話者が区別しにくい組み合わせがあります。
『英語耳』の良さは、それらを知識として読むだけで終わらせず、実際に聞き、口の形や舌の位置を確認し、自分で発音するところまで反復する点です。自分の中に新しい音のカテゴリーを作る練習、と考えると分かりやすいでしょう。
特に次のような人には相性があります。
- 似た音の違いが分からず、単語を聞き間違える
- カタカナ読みは分かるが、実際の音と結びつかない
- L・R、TH、V・Bなど特定の音が苦手
- 発音記号と実際の音を結びつけたい
- 発音練習をリスニングにも活かしたい
反対に、英語を一音ずつ区切って話す、すべての語へ母音を足す、息が続かないという人は、個別音より先に発声の大枠を整えるほうが変化しやすい場合があります。
『英語耳』の良いところ
1.聞くだけでなく、自分の口で音を再現する
聞き流しでは、注意を向けていない音の違いを学びにくいものです。本書は、音を聞いたあとに自分でも発音するため、受け身のリスニングで終わりません。
舌や唇をどう使うかを確認し、音を作り、元の音と比べる。この往復によって、「なんとなく違う音」だったものを、観察できる対象へ変えられます。
2.似た音を区別するための基準を作れる
日本語の「ア」に近く聞こえる英語の母音も、実際には口の開き方、舌の位置、長さ、周囲の子音などが異なります。すべてをカタカナ一文字へまとめると、聞くときの候補が粗くなります。
『英語耳』で口の動きと音を結びつけると、英語の音を日本語へ無理に置き換えず、そのまま識別する足場を作れます。
3.苦手な音を特定しやすい
網羅的に練習する教材には、自分の穴を見つけやすい利点があります。一通り試したうえで、区別できない音、発音しにくい音、会話で崩れる音だけを重点的に繰り返せます。
英会話に必要なのは、すべてを同じ時間だけ練習することではありません。意味の取り違えや聞き返しにつながる音から直すのが効率的です。
4.発音記号を音声と一緒に覚えられる
発音記号は、記号だけを暗記すると実用性が見えにくいものです。音声、口の使い方、単語例と一緒に触れることで、辞書を引いたときに音を予測するための地図になります。
ただし、すべての記号を覚えてから英会話を始める必要はありません。詳しくは発音記号を覚えなくても英語は話せる?で整理しています。
「発音できない音は聞き取れない」は本当か
『英語耳』と一緒によく語られるのが、「自分で発音できない音は聞き取れない」という考え方です。学習の方向としては有効ですが、文字どおりの絶対法則ではありません。
人は、自分では上手に再現できない音でも、違いを認識できることがあります。逆に、単音を正しく発音できても、速い会話の中では語彙を知らない、音声変化を予測できない、英文を前から処理できないといった理由で聞き取れないことがあります。
実用上は、次のように捉えるのが適切です。
- 発音練習によって、音へ注意を向けやすくなる
- 口の動きと音を結ぶと、似た音の違いを学びやすい
- 自分で再現できる音は、記憶と照合しやすくなる
- ただし、リスニングには語彙・文法・意味処理も必要
発音できなければ一生聞こえない、という話ではありません。発音してみることで、今まで同じ箱へ入れていた音を、別の音として観察しやすくなるのです。
英会話スクール「b わたしの英会話」・英語コーチング「be:RIZE」創業者
『英語喉』と『英語耳』はどう使い分ける?
| 比較 | 『英語喉』 | 『英語耳』 |
|---|---|---|
| 主な範囲 | 息・響き・喉の力み・音節 | 母音・子音・口や舌の位置 |
| アプローチ | 発声を大きく切り替える | 個別音を細かく区別する |
| 向く課題 | 母音挿入、途切れ、口先の力み | L・Rなど似た音の識別と発音 |
| 注意点 | 個別音は別途補修が必要 | 単音だけでは会話の流れが作れない |
| おすすめの位置 | 大枠を作る前半 | 弱点を直す中盤 |
前の記事で解説した『英語喉 50のメソッド』と『英語耳』は、競合する教材ではありません。マクロとミクロの関係です。
口先へ力が入り、一音ずつカタカナで区切る状態のまま個別音だけを直しても、会話になると元へ戻りやすくなります。先に息と音節の流れを作り、その後、意味の伝達を妨げる個別音を『英語耳』で直すと役割が明確になります。

『英語耳』を英会話へつなげる5段階
ステップ1.一度に直す音を一つに絞る
一日に多くの音を流して終わるより、区別しにくい一組を選びます。元音声を聞き、違いがどこにあるか観察します。
ステップ2.口・舌・息の使い方を確認する
鏡も使いながら、唇の形、舌の位置、息が出ているか、声帯が振動しているかを確認します。説明を読むだけでなく、身体の感覚と音を結びます。
ステップ3.録音して元音声と比べる
自分の頭の中で聞こえる声と、録音された声は違います。元音声と交互に聞き、直すポイントを一つだけ決めます。音声認識は補助になりますが、認識されたから完全に正しいとは限りません。
ステップ4.単語の中で練習する
単音が出たら、語頭・語中・語末にその音が入る単語へ移します。音だけでは発音できても、前後の音が付くと元の癖へ戻ることがあるためです。
ステップ5.短いフレーズと実際の会話へ移す
最後は、その単語を含む短文を意味ごと話します。発音へ意識を100%向けた状態から、伝える内容へ注意を戻しても音が残るまで反復します。
一つの音をきれいに出せたところがゴールではありません。短いフレーズで使い、意味を考えながら話しても再現できて、初めて英会話の道具になります。
英会話スクール「b わたしの英会話」・英語コーチング「be:RIZE」創業者
『英語耳』だけでは補いにくいこと
良い教材でも、守備範囲の外はあります。次の課題は別の練習と組み合わせましょう。
- 息と響き:喉から発音するとは?
- 母音挿入:カタカナ英語で母音を入れる理由
- 音節とリズム:英語が一音ずつ途切れる原因
- 音の連結:リエゾンは暗記すべき?
- 意味処理を含む聞き取り:英語リスニングの勉強法
特に、「単語は聞き取れたのに文の意味が残らない」という状態は、発音だけの問題ではありません。語彙や英文構造を、音声の速さで処理する練習が必要です。
おすすめの人・途中で挫折しやすい人
おすすめの人
- 個別音を体系的に学びたい
- 聞き分けにくい音がはっきりしている
- 音声を真似し、録音を比較する練習ができる
- 発音記号を実際の音と一緒に覚えたい
- 発音とリスニングを同時に改善したい
途中で挫折しやすい人
- 最初から全項目を完璧にしようとする
- 本を読んで理解するだけで、音声を使わない
- 単音練習を続け、短文や会話へ移さない
- 発音だけでリスニングの全問題が解決すると考える
- 口先が力んだ状態や母音挿入を放置している
全部を同じ精度で仕上げる必要はありません。一巡して自分の弱点を見つけ、会話でよく使う単語に関わる音から直すほうが続けやすくなります。
be:RIZEなら『英語耳』をどう使うか
be:RIZEでは、発音本を一冊終えること自体を目的にしません。受講者の会話や録音を確認し、まず発声の大枠に問題があるのか、個別音に問題があるのかを分けます。
- 息・響き・音節・母音挿入を確認する
- 伝達を妨げている個別音を特定する
- 『英語耳』型の練習で聞く・発音する・比較する
- 本人が使う単語とフレーズへ置き換える
- 実際の英会話で再現できるか確認する
ネイティブ発音の完全再現ではなく、相手が意味を取りやすく、自分も無理なく続けて話せる発音が目標です。発音学習全体の順番は英語発音大全で確認できます。
まとめ|『英語耳』は弱点を見つけて会話へ移すと活きる
『英語耳』は、英語の個別音を聞き分け、自分の口で再現するための優れた教材です。特に、カタカナでは同じように聞こえる音を別のカテゴリーとして学び直す用途に向いています。
- 発音とリスニングを往復できる
- 似た音を区別する基準を作れる
- 自分が苦手な母音・子音を見つけやすい
- 発音記号を実際の音と結びつけられる
- 単音で終わらず、単語・短文・会話へ移す必要がある
喉発音で大枠を整え、『英語耳』で個別音を補修し、短いフレーズで使う。名著だから最初から全部やり切るのではなく、自分の英会話に必要な部分を選んで使うのが、もっとも実践的です。
口・舌・息の動きをさらに具体的に確認したい方は、『UDA式30音練習帳』は英会話に効果ある?も参考にしてください。
7冊の役割をまとめて比べたい人は、英語発音本おすすめ7冊比較をご覧ください。






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