「英語が全くできない。でも、社会人になった今からやり直したい」
そう思って参考書を探し始めたものの、単語、文法、発音、TOEIC、英会話、シャドーイング……候補が多すぎて、結局何から始めればいいのかわからない。そんな方は少なくありません。
はじめまして。しゅみすけ(大山俊輔)です。僕は20年以上にわたり、大人の英語学習をサポートしてきました。現在は、聞ける・話せる力に特化した英語コーチング「be:RIZE」を運営しています。
これまで多くの社会人学習者と話してきてわかったのは、「英語ができない人」ほど能力が低いのではなく、最初に選ぶ学習の順番が自分の目的と合っていないことです。
結論から言えば、英語が全くできないと感じている社会人が最初にするべきことは、分厚い単語帳を暗記することでも、文法書を最初のページから読むことでもありません。
「何のために英語を使いたいのか」を決め、自分の現在地を確認したうえで、英語の骨格と日常会話で使うコア単語から小さく組み直すこと。これが最初の一歩です。
この記事では、英語初心者の社会人が迷わずスタートできるように、学習の順番を5つのステップで具体的に解説します。
まず知ってほしい:「英語が全くできない」は一つの状態ではない
ひと口に「英語が全くできない」と言っても、実際の状態は人によって違います。
- 学生時代以来、英語にほとんど触れていない
- 単語や文法は少しわかるが、聞く・話すとなると止まってしまう
- TOEICや英検の勉強経験はあるが、会話になると英語が出てこない
- 何度も始めたものの、教材を買っただけで続かなかった
この4人に同じ教材と同じ勉強法を渡しても、うまくいきません。だから最初に必要なのは、「初心者だから中学英文法を全部やる」と一括りにすることではなく、自分がどこで止まっているのかを分けて考えることです。
なお、「学生時代以来やっていない」「簡単な文法も自信がない」という人でも、英語を完全にゼロから始めるわけではありません。学校で見聞きした英語の断片は、思っている以上に残っています。必要なのは、ゼロから大量に詰め込み直すことではなく、散らばった知識を使える順番に並べ直すことです。
ステップ1:英語を学ぶ目的を「場面」で決める
最初に、「英語ができるようになりたい」を、もう少し具体的な場面に変えてみましょう。
たとえば、次のように考えます。
- 海外旅行で、ホテルやレストランのやり取りを自分でしたい
- 外国人の同僚と、短い雑談ができるようになりたい
- 英語の会議で、話の大筋を聞き取って一言でも発言したい
- 映画やYouTubeを、少しずつ字幕なしで楽しみたい
- 将来の仕事や生活の選択肢を広げたい
目的を場面で決める理由は、必要な英語が変わるからです。
海外旅行で会話をしたい人が、いきなり難しい英文読解やビジネス単語を大量に覚える必要はありません。一方、海外本社とのメールが中心なら、会話練習だけを続けても目的には届きません。
「英語全般」を一度に攻略しようとすると、学ぶ範囲が無限に広がります。まずは、自分が英語を使っている一つの場面を思い浮かべてください。それだけで、教材選びの基準が生まれます。
ステップ2:現在地は点数より「できる動作」で確認する
次に、自分の現在地を確認します。ただし、初心者が最初から難しい模試を受けて、低い点数に落ち込む必要はありません。
次の項目を、できる・少しできる・まだ難しい、の3段階で確認してみましょう。
- I am tired. や I like coffee. 程度の短い文なら意味がわかる
- 自分の名前、仕事、趣味を短い英語で言える
- ゆっくり読まれた短い英文なら、知っている単語を拾える
- 英語を見たとき、主語と動詞を探せる
- 中学レベルの基本動詞を、簡単な文の中で使える
全部できなくても問題ありません。これは合否判定ではなく、スタート地点を決めるための確認です。
たとえば、文字なら意味がわかるのに音ではわからないなら、知識不足より「音と意味の接続」が課題です。意味はわかるのに話せないなら、知識を素早く取り出す練習が足りていない可能性があります。
「自分は英語ができない」と一枚のラベルを貼るのをやめ、何ならできて、どこで処理が止まるのかを見る。これが、無駄な遠回りを減らします。
ステップ3:文法用語より先に「英語の骨格」をつかむ
英語を話したり聞いたりするうえで重要なのは、文法用語をたくさん暗記することより、英文の骨格を左からつかむことです。
まずは、次のような短い文を見てください。
- I am busy.(私は=忙しい状態)
- I work.(私は+働く)
- I like music.(私は+好む+音楽を)
細かい説明をいったん外すと、英語は「誰が」「どうする・どんな状態」「何を」という骨格に、情報を左から足していく言語です。
初心者が文法書を最初から読み始めると、現在完了、関係代名詞、仮定法など、説明の森に入り込みがちです。しかし、会話の土台になるのは、まず短い英文の配置です。
最初の段階では、難しい文を正確に作ることより、短い骨格を見た瞬間に意味が取れ、自分でも口から出せることを優先してください。
社会人の英語のやり直しで、単語と文法の詰め込みから始めるとなぜ挫折しやすいのかは、「社会人の英語やり直しは何から?単語と文法から始めると挫折する理由」でも詳しく解説しています。
ステップ4:難しい単語より、コア単語を使えるようにする
英語初心者が最初から何千語も覚えようとすると、学習時間の大半が暗記で終わります。それより先に、日常会話で何度も使う基本動詞を、短い文の中で使えるようにしましょう。
たとえば、次のような単語です。
- be:ある状態にある
- have:自分のところに持っている
- get:ある状態へ動く・変化する
- go:今いる地点から離れて進む
- come:話し手の側へ近づく
- take:自分のところへ取り込む
- give:相手のところへ渡す
大切なのは、日本語訳を一対一で暗記することではありません。
たとえば get を「手に入れる」だけで覚えると、get tired、get ready、get marriedが別々の熟語に見えます。しかし、「ある状態へ移る」というコアイメージがあれば、「疲れた状態になる」「準備ができた状態になる」「結婚した状態になる」と共通の動きが見えてきます。
初心者ほど、知っている単語の数を増やす前に、少ない単語を場面に合わせて動かす感覚を育てることが重要です。
ステップ5:読める英語を「音」と「自分の言葉」につなぐ
骨格とコア単語を少しずつ理解したら、短い英文を使って、文字・音・意味・発話をつなぎます。
おすすめの順番は次の通りです。
- 短い英文を見て、意味と骨格を確認する
- 音声を聞き、どの音がどう変化しているか確認する
- 意味を思い浮かべながら、音声に続いて声に出す
- 一部の単語を、自分に関係する内容へ入れ替える
- 最後は文字を見ずに、場面から英文を出してみる
たとえば、I’m tired today. という一文なら、音を真似するだけで終わらせず、I’m busy today.、I’m free today.、I’m happy today.のように、自分の状態に合わせて入れ替えます。
こうして「教材の英文」を「自分が使う英文」へ変えると、知識が会話の回路につながり始めます。
なお、初心者が意味や骨格を確認せず、いきなり高速音声を追いかけるシャドーイングを始めると、音を追うだけで頭がいっぱいになります。詳しくは、「シャドーイングを初心者がやると挫折する理由」も参考にしてください。
社会人初心者の1日60分モデル
仕事や家事がある社会人に、最初から1日3時間の学習を課しても長続きしません。まずは1日60分を目安に、次のように分けてみてください。
| 時間 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 10分 | 前日の短文を復習 | 忘れる前提で再接続する |
| 15分 | 基本骨格とコア単語 | 英語を組み立てる土台を作る |
| 15分 | 短い音声を精聴 | 文字と実際の音をつなぐ |
| 15分 | 音読・言い換え練習 | 知識を口から出せる状態にする |
| 5分 | できたことを記録 | 継続と次の課題につなげる |
毎日60分が難しい日は、15分でも構いません。大切なのは「予定どおりできなかったからゼロ」と考えないことです。
15分の日があっても、翌日に戻れば学習は続いています。英語学習では、一度も途切れないことより、途切れたあとに戻れる仕組みを作る方が重要です。
初心者が最初にやらなくてもよい5つのこと
学習の選択肢を増やす前に、最初はやらなくてもよいものも整理しておきましょう。
1.分厚い単語帳を最初から最後まで暗記する
目的が会話なら、使用頻度の高い基本単語を文の中で使う方が先です。資格試験用の語彙は、必要になった段階で追加できます。
2.文法書を1ページ目から完璧に理解する
文法は不要ではありません。ただし、すべてを先に学び終える必要もありません。短い文を使いながら、必要な文法を往復して理解する方が定着します。
3.聞き流すだけでリスニングを伸ばそうとする
意味も音の変化もわからない英語を流し続けても、背景音になりがちです。短く区切り、文字・意味・音をつないでください。
4.いきなり毎日オンライン英会話を入れる
実践は大切ですが、使える材料がないまま会話に入ると、毎回同じ表現で終わり、自信を失うことがあります。短い骨格とコア単語を準備し、練習したものを試す場として使いましょう。
5.他人の学習時間と比べる
1日3時間できる人の計画を、仕事や家庭がある自分にそのまま移植する必要はありません。続けられる時間と負荷は人によって違います。
最初の1か月は「英語ができる証明」ではなく土台作り
初心者の最初の1か月は、映画を字幕なしで理解したり、外国人と流暢に話したりする期間ではありません。
目指したいのは、次のような小さな変化です。
- 短い英文なら、左から骨格を取れるようになった
- 基本動詞を日本語訳だけでなくイメージで捉えられるようになった
- 短い音声の中で、以前より音の区切りが聞こえるようになった
- 自分についての簡単な文が、以前より早く出るようになった
- 学習を休んでも、また戻れるようになった
この変化は派手ではありません。しかし、ここを飛ばして難しい教材へ進むと、途中で処理が追いつかなくなります。
英語力は、教材の難しさではなく、簡単なことをどれだけ自然に処理できるかで変わります。最初の1か月は、焦って上級者に見せる期間ではなく、これから伸び続けるための回路を作る期間です。
何から始めるか迷うのは、意志が弱いからではない
ここまで読んで、「やることはわかった。でも、自分に合う順番まで一人で決められるだろうか」と感じた方もいるかもしれません。
それは意志が弱いからではありません。英語学習には、現在地、目的、使える時間、過去の学習経験によって、無数の組み合わせがあるからです。
be:RIZEでは、全員に同じ教材と同じ学習量を押しつけるのではなく、現在地を確認し、聞く・話す力につながる順番で個別の学習計画を作ります。詳しい考え方やサポート内容は、be:RIZEのコーチングメソッドでご覧いただけます。
「自分の現在地を一度整理したい」「独学でまた迷いそう」という方は、まずしゅみすけの無料英語ウェビナーから、英語を聞ける・話せる状態へ変える全体像を確認してみてください。
まとめ:英語が全くできない社会人の最初の一歩
英語が全くできないと感じる社会人が、最初にするべきことは次の5つです。
- 英語を使いたい場面を一つ決める
- 点数ではなく「できる動作」で現在地を確認する
- 短い英文の骨格を左からつかむ
- 難しい単語より、日常会話のコア単語を使えるようにする
- 読める英文を、音と自分の言葉につなぐ
英語ができないのは、才能や年齢のせいとは限りません。多くの場合、今の自分に合わない場所から始めていただけです。
全部を一度に始めなくて構いません。まずは今日、「英語を使って何をしたいか」を一つ書き、その場面で使いそうな短い英文を一つ選んでみてください。
正しい第一歩は、気合を入れて大きく跳ぶことではありません。迷わず次の一歩を置ける、小さな土台を作ることです。
独学だけでなく教室から始めることも考えている方は、全くの初心者が英会話教室を選ぶときのポイントも参考にしてください。



