英語日記は、スピーキング力を伸ばすアウトプット練習としてよく紹介されます。
毎日の出来事を英語で書けば、自分が実際に使う単語や表現を覚えられます。誰かに急かされることもないため、英会話より落ち着いて英文を組み立てられるのも大きな長所です。
しかし、英語日記を何か月続けても、会話になると言葉が出てこない人もいます。
その原因の一つが、先に日本語で日記を完成させ、それを英語へ翻訳していることです。
この方法でも英文を書く力はつきます。ただし、毎回「この日本語は英語で何と言うのだろう」と考えている限り、表現が難しくなるほど辞書や翻訳ツールが必要になります。書く時間はあるので何とか完成できても、相手を待たせられない会話では同じ処理が間に合いません。
英語日記をスピーキングへつなげる鍵は、日本語を上手に英訳することではありません。日本語の文章になる前の場面を見て、まず英語の主語と動詞から始まる小さな箱を作り、その中へ必要な情報を入れることです。
この記事では、英語日記の効果と注意点、日本語を英訳せずに書く具体的な手順、そして書いた英文を会話で使えるようにする練習法を解説します。
英語日記はスピーキングに効果がある?
結論から言えば、英語日記はスピーキングにも効果があります。ただし、日記を書くだけで自動的に話せるようになるわけではありません。
英語日記で伸ばしやすい力と、日記だけでは不足しやすい力を分けて考えることが大切です。
| 英語日記で練習しやすいこと | 英語日記だけでは不足しやすいこと |
|---|---|
| 自分が伝えたい内容を選ぶ | 相手の話を聞いてすぐ反応する |
| 主語・動詞・時制を考える | 時間制限の中で英語を組み立てる |
| 自分に必要な語彙を見つける | 発音・リズム・イントネーション |
| 一度学んだ表現を再利用する | 質問や相づちを使って会話を続ける |
英語日記は、いきなり自由に話すよりも負荷が低い練習です。途中で止まり、考え、書き直すことができます。そのため、知識として持っている単語や文法を、自分の出来事を伝える英語へ変える橋渡しになります。
一方、実際の会話では数分かけて一文を完成させることはできません。英語日記をスピーキング練習にするには、書き方そのものを会話に近づけ、最後に必ず口から出す工程を加える必要があります。
英語日記で身につく3つの力
1.自分が本当に使う英語がわかる
教材の例文には、一般的によく使われる表現が載っています。しかし、自分の仕事、家族、趣味、生活習慣について話すために必要な英語は、人によって違います。
英語日記を書いていると、次のような「自分の頻出語」が見えてきます。
- 仕事が忙しかった
- 電車が遅れた
- 友人と食事をした
- 体調がよくなかった
- 週末の予定を変更した
何度も登場する場面の英語は、実際の会話でも使う可能性が高いものです。英語日記には、自分専用の会話教材を作れる利点があります。
2.英文の骨格を考える時間を持てる
英会話中は、言いたい内容、単語、文法、発音をほぼ同時に処理します。初心者にとっては負荷が高く、知っている表現でも出てこないことがあります。
日記なら、まず「誰が・どうだった」「誰が・何をした」という骨格を落ち着いて確認できます。
- I was tired.
- My train was late.
- I met my friend.
- We changed our plan.
長い英文を書く前に、この小さな骨格を何度も作ることが、スピーキングの土台になります。
3.同じ表現を自分の場面で再利用できる
覚えた英語が会話で出てこない理由の一つは、教材の中でしか使っていないことです。
たとえば、教材で I had a busy day. を学んだら、そのまま暗記して終わるのではなく、自分の日記で使います。
- I had a busy morning.
- I had a long meeting.
- I had a good time with my friend.
一つの型を自分の複数の場面へ移すことで、英文が単なる暗記項目から、会話で取り出せる道具へ変わっていきます。
英語日記の落とし穴|日本語を書いてから英訳すると辞書が手放せない
英語日記で最も注意したいのが、次の順番です。
- 今日あったことを日本語で詳しく書く
- 日本語の内容に対応する英単語を探す
- 辞書や翻訳ツールで表現を調べる
- 英語の語順へ並べ替える
- 日本語と同じ意味になったか確認する
たとえば、次の日本語を日記に書いたとします。
「今日は朝から仕事が立て込んでいて、お昼をゆっくり食べる余裕もなかったが、何とか予定していた作業を終えることができた」
これをそのまま英訳しようとすると、「仕事が立て込む」「余裕がない」「何とか」「予定していた作業」といった日本語に対応する表現を一つずつ探し始めます。
辞書や翻訳ツールを使えば、立派な英文は作れるでしょう。しかし、練習している処理は次の形です。
完成した日本語文 → 単語検索 → 文法変換 → 英文
これを毎日繰り返すと、日本語を英語へ変換する力は高まります。ただし、会話で必要なのは必ずしも翻訳力ではありません。
実際の会話の出発点にあるのは、完成した日本語文ではなく、目の前の場面、記憶、感情、伝えたい意図です。そこで日本語を一度完成させてしまうと、英語を話す前の工程が増えます。
場面 → 日本語文 → 英語
この真ん中の日本語文が複雑なほど、辞書が必要になり、会話中の処理も遅くなります。
日本語と英語では情報を組み立てる順番が違う
日本語は、助詞を使いながら情報をつなぎ、最後の述語まで内容を保持できる言語です。
「今日は、朝から、仕事が立て込んでいて、お昼を食べる時間もほとんどなかったけれど……」
この段階でも、日本語なら話を続けられます。最後に「作業を終えた」「疲れた」「充実していた」などを置けば、文全体がまとまります。
一方、英語は比較的早い段階で主語と動詞を置きます。
- I was busy.
- I had a lot of work.
- I didn’t have time for lunch.
- But I finished everything.
日本語の長い一文と一対一で対応していません。それでも、伝えている場面はほぼ同じです。
英語日記で大切なのは、日本語の内容を削らず再現することではありません。場面を見て、英語が入る小さな箱を先に置くことです。
「SVの箱に場面を入れる」とは?

英語の基本的な箱は、主語と動詞から始まります。
- S+be動詞:誰・何が、どんな状態か
- S+一般動詞:誰・何が、何をするか
たとえば、カフェで友人と会った場面を日記にするとします。
日本語を先に作ると、次のようになるかもしれません。
「今日は久しぶりに大学時代の友人と駅の近くのカフェで会い、近況について話しながら楽しい時間を過ごした」
これを一文のまま英訳するのではなく、まず場面の中から小さな事実を選びます。
- 私は友人に会った
- 私たちはカフェへ行った
- 私たちはたくさん話した
- 私は楽しかった
そして、英語の箱へ入れます。
I met an old friend.
We went to a cafe near the station.
We talked a lot.
I had a great time.
先に日本語の長文を完成させなくても、場面は十分に伝わります。
この感覚は、引っ越しの荷物を一つの巨大な箱へ無理に詰め込むのではなく、小さな箱へ分けて入れることに似ています。箱の形が先に決まっているので、「これは誰の話か」「状態か動作か」「次に何を足すか」が整理しやすくなります。
日本語を英訳しない英語日記の書き方5ステップ
ステップ1.日本語文ではなく一つの場面を選ぶ
最初に「今日の日記を日本語で書こう」と考えないでください。頭の中の写真や短い動画を一つ選びます。
- 朝、寝坊して時計を見た場面
- 昼休みに同僚と食事をした場面
- 帰りの電車が遅れた場面
- 家で映画を見た場面
一日全体を説明しようとすると、内容が複雑になります。最初は一場面で十分です。
ステップ2.場面を2〜4個の小さな事実に分ける
次に、場面の中で本当に伝えたいことだけを選びます。
電車が遅れた場面なら、たとえば次の三つです。
- 電車が遅れた
- 会社へ遅れて着いた
- 疲れた
美しい日本語に整える必要はありません。この段階は文章作成ではなく、場面を小分けにする作業です。
ステップ3.各事実の主語と動詞を決める
それぞれについて「誰・何が」「どうだった・何をした」を決めます。
| 場面の一部 | 主語 | 状態・動作 |
|---|---|---|
| 電車が遅れた | My train | was late |
| 会社へ遅れて着いた | I | got to work late |
| 疲れた | I | was tired |
ここで重要なのは、細かい情報を入れる前に骨格を完成させることです。
ステップ4.必要な情報だけ後ろへ足す
骨格ができたら、いつ、どこで、誰と、なぜ、どのように、といった情報を後ろへ加えます。
My train was late this morning.
I got to work twenty minutes late.
So I was tired before my day even started.
最初からすべてを一文へ入れようとしないでください。短い英文を先に置き、必要なら次の文を足します。
ステップ5.最後に辞書を使い、調べた表現は一つだけ残す
辞書を使ってはいけないわけではありません。問題は、英文を作るたびに日本語と一対一で対応する表現を探し続けることです。
まず知っている単語で書き、それでも必要な語だけ最後に調べます。一日一つで十分です。
たとえば「電車が遅れた」を表すために delay を知らなくても、My train was late. と書けます。簡単な英語で箱を作った後、必要なら別の表現を追加で学びます。
辞書は文章を最初から作ってもらう道具ではなく、自分の箱へ足りない部品を一つ補う道具として使いましょう。
初心者向け|英語日記は3文で十分
英語日記を始めるとき、長く書く必要はありません。おすすめは次の3文です。
- 事実:何があったか
- 追加:もう一つ何があったか
- 感情・意見:どう感じたか
たとえば、仕事の会議について書くなら次のようになります。
I had a long meeting today.
We talked about our new project.
I was tired, but it was useful.
週末に料理をしたなら、次のように書けます。
I cooked dinner for my family.
I made curry.
Everyone liked it, so I was happy.
三文なら、毎日続けやすく、翌日に口頭で再現することもできます。難しい一文より、すぐ取り出せる簡単な三文を増やす方が、初心者のスピーキングには役立ちます。
英語日記をスピーキングへ変える練習法
英語日記を書いたら、ノートを閉じて終わりにしないでください。次の三つを加えると、書く練習が話す練習へ変わります。
1.書いた直後に3回音読する
自分で書いた英文を声に出します。黙読ではなく、口を動かして音の流れまで確認します。
このとき一語ずつ正確に読むだけでなく、場面を思い浮かべて相手へ伝えるつもりで読みましょう。
2.翌日はノートを見ず、同じ場面を話す
英文を一字一句暗唱する必要はありません。前日に選んだ場面を思い出し、同じ箱を使って話します。
前日:
I had a long meeting today. We talked about our new project. I was tired, but it was useful.
翌日:
I had a meeting yesterday. It was long. But we had a good discussion.
表現が変わっても問題ありません。大切なのは、日本語の日記を思い出して英訳するのではなく、場面から英語をもう一度立ち上げることです。
3.一つ質問を作り、会話の入口にする
日記の内容から質問を一つ作ると、独り言から会話へ移りやすくなります。
- Did you have a busy day?
- What did you do after work?
- Do you like cooking?
- Have you ever missed a train?
オンライン英会話やレッスンでその質問を使えば、自分の日記が実際の会話の話題になります。
英語日記で翻訳ツールやAIを使うときの注意点
翻訳ツールや生成AIは、英文の確認や別表現を知るために役立ちます。ただし、最初から日本語全文を渡して英訳してもらうと、自分で英語の箱を作る工程がなくなります。
おすすめの順番は次の通りです。
- 場面を選ぶ
- 知っている英語で2〜3文を書く
- 主語と動詞が入っているか確認する
- 自分の英文をAIや辞書で確認する
- 修正理由を一つだけ理解する
- 修正した文を声に出す
AIへ尋ねる場合も、「この日本語を自然な英語にしてください」だけでなく、次のように使う方が学習になります。
- 「この英文は会話で自然ですか」
- 「中学英語レベルでもっと簡単にできますか」
- 「この文を二つの短い文へ分けてください」
- 「主語と動詞の骨格を教えてください」
答えを作ってもらうのではなく、自分が作った箱を点検してもらう感覚です。
英語日記・瞬間英作文・独り言はどう組み合わせる?
三つの練習は競合するものではなく、役割が異なります。
| 練習 | 主な役割 |
|---|---|
| 瞬間英作文 | 用意された内容で基本の英文構造を取り出す |
| 英語日記 | 自分の場面を英語の骨格へ整理する |
| 独り言英会話 | 時間をかけず、場面から口頭で英語を出す |
初心者なら、短い例文で型を確認し、その型を英語日記で自分の場面へ移し、翌日に独り言で口から出す流れがおすすめです。
前の記事「瞬間英作文と独り言英会話の違い|初心者はどちらから始める?」でも、この三つをつなぐ考え方を詳しく解説しています。
独り言の具体的な進め方は「英語の独り言は効果ある?初心者でも話せるようになる正しいやり方」も参考にしてください。
しゅみすけ式「直感英会話」と英語日記
しゅみすけ式の「直感英会話」で重視しているのは、日本語を素早く翻訳することではありません。
- 場面・感情・意図を見る
- 誰・何の話かを決める
- 状態か動作かを決める
- 主語と動詞から短い骨格を置く
- 必要な情報を後ろへ足す
英語日記は、この処理を時間をかけて練習できる場所です。
紙の上で何度も「場面→骨格→追加」の順番を経験し、翌日に同じ場面を口から出す。これを繰り返すと、英語日記は単なるライティング練習ではなく、英語を前から組み立てるための低速トレーニングになります。
日本語を英語に訳してから話す癖そのものを見直したい方は、「日本語を英語に訳してから話す癖をやめる5ステップ」もあわせてご覧ください。
英語日記を続けるための1日10分メニュー
- 1分:今日の一場面を選ぶ
- 2分:場面を2〜3個の小さな事実へ分ける
- 3分:主語と動詞から3文を書く
- 2分:必要な表現を一つだけ確認する
- 2分:場面を思い浮かべながら3回声に出す
翌日は新しい日記を書く前に、前日の場面をノートなしで30秒だけ話します。
毎日長文を書くより、短い英文を翌日も取り出す方がスピーキングとの接続は強くなります。書いた量ではなく、場面から再現できた回数を増やしましょう。
まとめ|英語日記は日本語の記録ではなく、場面を英語の箱へ入れる練習
英語日記は、初心者でも始めやすく、自分が実際に使う英語を増やせる優れたアウトプット練習です。
ただし、先に完成した日本語の日記を書き、それを一文ずつ英訳していると、辞書や翻訳ツールがないと英文を作れない状態になりやすくなります。
ポイントは次の五つです。
- 日本語文ではなく、一つの場面から始める
- 場面を2〜4個の小さな事実へ分ける
- 主語と動詞から英語の箱を先に作る
- 必要な情報だけ後ろへ足す
- 翌日、同じ場面を見ずに口から出す
日本語を精密に再現する長い英文より、場面からすぐ立ち上がる短い英文の方が、会話では役立ちます。
なお、be:RIZEでは「直感英会話」を記事で紹介するだけでなく、英語コーチングの受講生向けに毎月ワークショップを開催しています。場面から主語と動詞の骨格を立ち上げ、実際に口を動かしながら、日本語を訳す処理から離れていく実践を行っています。
英語日記や独り言を続けても翻訳癖が抜けない方、自分に必要な練習順を整理したい方は、be:RIZEの英語コーチングと学習メソッドもご覧ください。



