「言いたいことはあるのに、英語にしようとすると急に難しくなる」
こんな経験はないでしょうか。
たとえば、「今後の対応について社内で検討させていただきます」と言いたい。ところが、今後の対応、社内で検討、させていただくを一つずつ英語に置き換えようとすると、辞書が必要になり、文法も気になり、会話は止まってしまいます。
でも、実際に相手へ伝えたいことが「チームと話して、金曜日までに返事をする」なら、英語はもっと短くできます。
I’ll talk to my team. We’ll get back to you by Friday.
これは難しい日本語を「簡単な英語に直訳した」のではありません。日本語の完成文をいったん手放し、相手に見せたい場面と事実を選び直したのです。
この記事では、英語で言いたいことを簡単にし、知っている単語で口語英語へ変える方法を5ステップで解説します。
英語で言いたいことが出てこないのは、単語不足だけが原因ではない
話せないとき、多くの人は「もっと単語を覚えないと」と考えます。もちろん語彙は必要です。しかし、単語を増やすだけでは解決しないこともあります。
頭の中に、すでに完成した長い日本語があるからです。
日本語の文を保ったまま英語へ変えようとすると、次の作業を同時にしなければなりません。
- 日本語に合う英単語を探す
- 日本語と英語で異なる語順を組み替える
- 主語や動詞を補う
- 丁寧さやニュアンスを再現する
- 文法が正しいか確認する
これでは、知識があっても瞬時には処理しにくくなります。日本語と英語の構造差については、なぜ日本人は英語を瞬時に話しにくい?日本語と英語の構造的な違いでも詳しく解説しています。
「簡単にする」とは、内容を幼くすることではない
英語を簡単にすると聞くと、「言いたいことを諦める」「幼稚な表現にする」と感じる人もいるかもしれません。
そうではありません。
簡単にするとは、相手に必要な情報を残し、伝達に不要な日本語の飾りを外すことです。
会話では、きれいな一文を完成させることより、相手と同じ場面を共有することが大切です。難しい日本語一文と英語一文を、必ず一対一で対応させる必要もありません。二文、三文に分けたほうが、かえって意味は明確になります。

難しい日本語を口語英語へ変える5ステップ
1.本当に伝えたいことを一つ決める
最初に、日本語の表現ではなく、相手に何を分かってほしいのかを考えます。
「今後の対応について社内で検討させていただきます」なら、状況によって意味は変わります。
- チームと話す:I’ll talk to my team.
- まだ決められない:We need more time.
- 金曜日に返事をする:We’ll get back to you by Friday.
元の日本語だけを見ても、どれが正解かは決まりません。だからこそ、英訳の前に自分の意図を具体化する必要があります。
2.抽象的な日本語を「見える事実」に変える
「対応」「検討」「影響」「状況」といった抽象語は便利ですが、そのまま英語にしようとすると選択肢が増えます。
そこで、カメラで撮れる場面に変えてみます。
- 検討する → チームと話す、選択肢を比べる、明日決める
- 遅延の影響 → 電車が遅れた、会議の最初に間に合わなかった
- 体調が優れない → 気分が悪い、頭が痛い、熱がある
場面が見えれば、使う動詞も見つけやすくなります。
3.長い一文を2〜3個の事実に分ける
日本語一文を英語一文に収めようとしないことも大切です。
たとえば、「先週辞令が出て、大阪支社への転勤が決まり、驚きました」を一気に訳そうとすると複雑になります。場面の順番に分ければ、次のように言えます。
I got an email from my boss.
I’m going to work in Osaka.
I was surprised.
短い文でも、「連絡が来た」「大阪で働く」「驚いた」という場面は十分に伝わります。これが、直感英会話で大切にしている考え方の一つです。
4.主語+基本動詞から骨格を作る
場面を分けたら、最初に「誰・何」と「どうした・どんな状態」を置きます。
- I + feel / want / need / think / know
- We + have / use / make / talk
- It / This + is / looks / works
- My train / The meeting + was / started / stopped
英語の骨格を作ってから、必要な情報だけを後ろへ足します。この順序は、英語は主語と動詞から始める|4コードで文の骨格を作る練習法で紹介した方法と同じです。
5.時間・場所・理由は必要な分だけ足す
最後に、相手が理解するために必要な情報を追加します。
My train was late.
これだけで理由が足りる場面もあります。
会議への影響まで必要なら、もう一文足します。
I missed the beginning of the meeting.
最初から完全な説明を作るのではなく、短い骨格を出してから足す。この順番なら、会話中の処理量を減らせます。
難しい日本語を簡単な口語英語へ変える具体例
| 頭に浮かんだ日本語 | 場面・事実への分解 | 口語英語の例 |
|---|---|---|
| 鏡がくもっている | 鏡に自分の顔が見えない | I can’t see my face in the mirror. |
| 体調が優れない | 気分がよくない | I don’t feel well. |
| 電車遅延の影響で会議の開始時刻に間に合わなかった | 電車が遅れた/会議の最初を逃した | My train was late. I missed the beginning of the meeting. |
| その日は予約が埋まっている | 空いている席・時間がない | We’re fully booked that day. |
| 今後の対応について社内で検討する | チームと話す/金曜日に返事をする | I’ll talk to my team. We’ll get back to you by Friday. |
| スケジュールに遅れが生じている | 予定より時間がかかっている | It’s taking longer than we expected. |
「鏡がくもっている」を表す英単語を知らなくても、「顔が見えない」という体験は言えます。英語では、日本語のラベルを再現するより、その場で自分が見たこと・感じたことを主語と動詞の箱に入れるほうが速い場合があります。
簡単にしても、残すべき情報は4つ
短くすることだけを目的にすると、大切な意味まで消えることがあります。次の4点のうち、相手が必要とするものは残しましょう。
- 誰・何の話か
- 何が起きたか、どんな状態か
- その結果どうなったか
- 相手や自分が次に何をするか
逆に、過剰な前置き、曖昧な名詞、会話では再現しなくてもよい敬語表現は外せます。丁寧さは、長い日本語をすべて移すのではなく、Please、Could you …?、声の調子などで別に調整できます。
言いたいことを簡単にする練習法
おすすめは「1場面3文トレーニング」です。
- 今日あった一場面を選ぶ
- 日本語の作文はせず、見えた事実を3つ書く
- 各事実を主語+基本動詞で英語にする
- ノートを閉じ、場面を思い浮かべながら言う
- 最後にだけ辞書やAIで自然さを確認する
たとえば、カフェが混んでいて入れなかった場面なら、次の3文で十分です。
I went to a cafe.
It was very crowded.
So I went somewhere else.
最初から辞書やAIに日本語全文を渡すと、きれいな英文は手に入っても、自分で場面を切り出す処理は育ちにくくなります。まず自分の英語で骨格を作り、その後で道具を使いましょう。
ゼロから作るのが難しい場合は、お手本の型を一部だけ変える英語のリライト練習から始めると、英語らしい骨格を崩さずに練習できます。さらに、音読から独り言へ段階的に進めたい人は、英語スピーキングを一人で練習する4段階トレーニングも参考にしてください。
直感英会話は「日本語を速く英訳する練習」ではない
be:RIZEで扱う直感英会話は、日本語の完成文を高速で英語へ変換する訓練ではありません。
場面を思い浮かべ、そこから誰が・どうしたという簡単な骨格を取り出し、知っているコア単語で表現する練習です。
日本語の「正解訳」を探すのではなく、同じ場面を自分の英語で見せる。この回路に慣れると、知らない単語があっても別の言い方を選べるようになります。
be:RIZEでは、受講生向けに直感英会話のワークショップを毎月開催しています。
知識を増やすだけでなく、日本語と英語の構造差を踏まえ、短い骨格から瞬時に場面を伝える順序でカリキュラムを設計しています。「分かるのに話せない」を、実際に口を動かしながら変えたい方は、be:RIZEの英語コーチングもご覧ください。
まとめ|日本語を削るのではなく、伝えたい場面を選び直す
英語で言いたいことを簡単にするコツは、難しい日本語を簡単な日本語へ言い換えてから英訳することではありません。
- 本当に伝えたいことを決める
- 抽象語を見える事実に変える
- 長い一文を2〜3個に分ける
- 主語+基本動詞から始める
- 必要な情報だけ後ろへ足す
「この日本語は英語で何と言うのだろう」ではなく、「相手にどの場面を見せたいのだろう」と考えてみてください。
日本語の完成文から離れた瞬間、すでに知っている簡単な英語が、会話で使える道具へ変わり始めます。



