海外出張が決まったとき、「英語を何とかしなければ」と思っても、何から準備すればよいかわからない方は少なくありません。
空港やホテルで使う旅行英会話を覚えるべきか。中学英文法を最初から復習するべきか。オンライン英会話を毎日受けるべきか。それとも、TOEICの勉強を始めるべきか——。
出発までの時間が限られているほど、教材を広げるのではなく、現地で実際に行う仕事から逆算する必要があります。
結論から言えば、海外出張の英語は次の順番で準備します。
- 出張中に英語を使う場面を洗い出す
- 自己紹介と自社・担当業務の説明を作る
- 会議・商談・プレゼンの目的と発言を準備する
- 聞き返し・確認・保留の表現を練習する
- 相手から聞かれそうな質問へ答える
- 空港・ホテル・移動の英語を最低限整える
空港やホテルの英語も必要ですが、定型表現や画面表示で対応しやすい場面が多くあります。一方、会議で自分の担当を説明する、相手の要望を確認する、質問へ答えるといった仕事の場面は、本人の業務内容に合わせた準備が必要です。
この記事では、海外出張が決まった社会人に向けて、必要な英語レベル、準備の優先順位、場面別の表現、出発までの期間に応じた練習方法を解説します。
海外出張に必要な英語レベルは目的によって変わる
海外出張へ行くために、TOEIC何点以上、英検何級以上と一律に決めることはできません。出張中の役割によって必要な英語が違うからです。
たとえば、英語が得意な同僚に同行して工場を見学する人と、一人で顧客へ提案し、条件交渉まで行う人では準備範囲が異なります。
| 出張中の役割 | 優先したい英語 | 準備の深さ |
|---|---|---|
| 視察・見学が中心 | 自己紹介、説明の聞き取り、基本的な質問 | 要点を確認し、簡単な感想を伝える |
| 社内会議へ参加 | 進捗報告、質問、確認、担当業務の説明 | 自分の議題について短く発言する |
| 顧客との商談 | 要望確認、提案、条件、次の行動 | 誤解を避け、合意事項を確認する |
| プレゼンを担当 | 発表、質疑応答、数字・根拠の説明 | 資料に沿って説明し、質問へ対応する |
| 交渉・意思決定を担当 | 条件提示、反対意見、代替案、保留 | 範囲・責任・期限を正確に伝える |
英語を流暢に話せなくても、役割が限定されており、準備した内容を短く伝えられれば対応できる出張はあります。反対に、試験の点数が高くても、自社製品や担当業務を英語で説明した経験がなければ、実務場面で止まることがあります。
まず必要なのは「英語全般のレベル」を上げることではなく、今回の出張で自分が果たす役割を明確にすることです。
最初に作るのは「出張中の英語場面リスト」
航空券を取ったら、旅程表とは別に、英語を使う場面の一覧を作ります。到着から帰国までを時間順にたどると、必要な準備が見えます。
- 空港で入国・乗り継ぎ・荷物の確認をする
- ホテルへ移動し、チェックインする
- 現地担当者と初めて会う
- 食事や移動中に雑談する
- 会議で自己紹介する
- 自社・部署・担当業務を説明する
- 進捗、課題、数字を報告する
- 相手の説明を聞き、質問する
- 自分の提案について質疑応答を行う
- 次の行動、担当、期限を確認する
次に、各場面を三段階に分けます。
| 優先度 | 判断基準 | 例 |
|---|---|---|
| 高 | 自分が英語で対応しなければ仕事が進まない | プレゼン、顧客への説明、担当議題の会議 |
| 中 | 同行者の支援はあるが、自分も話す可能性がある | 社内会議、会食、現場見学 |
| 低 | 定型表現、翻訳アプリ、画面操作で対応しやすい | ホテル、買い物、空港内の移動 |
準備時間は、優先度の高い場面から配分します。旅行英会話集を最初のページから覚えるより、翌日の重要会議で自分が話す三分間を先に完成させる方が、今回の出張には役立つかもしれません。
仕事で英語が必要になったばかりで全体の優先順位が決まっていない方は、仕事で英語が必要になった社会人は何から始める?初心者向け5ステップも参考にしてください。
準備1:自己紹介と自社・担当業務の説明
海外出張では、会議の冒頭だけでなく、空港で迎えてもらったとき、オフィスを訪問したとき、会食の席など、何度も自己紹介する機会があります。
長い経歴を暗記する必要はありません。次の5項目を一文ずつ準備します。
- 名前と所属
- 担当業務
- 現在関わっている仕事
- 今回の出張で確認したいこと
- 相手との接点
Hello, I’m Yuki Sato from the product planning team in Tokyo.
(東京の商品企画チームの佐藤由紀です。)I’m responsible for the Japanese market.
(日本市場を担当しています。)I’m currently working on the launch of our new service.
(現在、新サービスの立ち上げに関わっています。)During this visit, I’d like to learn more about your customer support process.
(今回の訪問では、御社の顧客サポートの流れについて詳しく学びたいと思っています。)
全文を一気に言う必要はありません。場面に応じて二文だけ使い、相手から質問されたら追加します。
自社説明も同様です。会社の沿革をすべて英訳するのではなく、次の項目を短く言えるようにします。
- 何を提供している会社か
- 主な顧客は誰か
- 自分の部署は何を担当しているか
- 今回、相手と何を一緒に進めたいか
公式サイトに英語版があるなら、その表現を確認してください。会社名、製品名、役職名、専門用語の表記を自己流で作らず、社内で統一された言い方を使います。
準備2:会議・商談の目的と自分の発言を作る
会議の英語を準備するときは、議事録のような長い原稿ではなく、各会議について次の一枚を作ります。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 会議の目的 | 何を共有・確認・決定するか |
| 参加者 | 役割、関心、決定権 |
| 自分の結論 | 最も伝えたいことを一文で |
| 根拠 | 数字、理由、現状を2〜3点 |
| 質問 | 相手へ確認したいことを3つ |
| 次の行動 | 担当者、期限、会議後に行うこと |
進捗報告なら、次の型が使えます。
現状:We have completed the first phase.
(第1段階を完了しました。)課題:The main issue is the delay in testing.
(主な課題はテストの遅れです。)次の行動:We plan to finish testing by next Friday.
(来週金曜日までにテストを終える予定です。)
会議全体の聞き取りに不安がある場合は、議題、参加者、数字、専門用語を先に把握します。詳しい準備方法は、英語会議で聞き取れない初心者が事前に準備すべき7つのことで解説しています。
準備3:相手へ確認したい質問を英語にする
海外出張では、「聞かれたことへ答える」準備ばかりに意識が向きます。しかし、自分から質問できるようにすると、会議の目的を達成しやすくなります。
次の観点から、各会議で最低三つの質問を作ります。
- 現状:今どこまで進んでいるか
- 理由:なぜその判断や問題が生じたか
- 要望:相手が何を必要としているか
- 懸念:最大のリスクは何か
- 担当:誰が確認・実行するか
- 期限:いつまでに決めるか
- 次の行動:会議後に何をするか
What is your main concern?
(最も懸念していることは何ですか。)What do you need from our team?
(私たちのチームに何が必要ですか。)Who will be responsible for the next step?
(次のステップは誰が担当しますか。)When should we make the final decision?
(最終決定はいつまでに行うべきですか。)
質問文を作ったら、相手から返ってきそうな答えも予測します。たとえば期限を尋ねるなら、日付、月、曜日、期間の表現を聞き取る準備が必要です。

準備4:聞き返し・確認・保留の表現
出張前に優先して口から出せるようにしたいのが、会話を止めずに修復する表現です。すべてを一度で聞き取ることより、聞き取れなかったときに確認できる方が実務では重要です。
もう一度言ってほしい
- Could you say that again, please?(もう一度お願いできますか)
- Could you speak a little more slowly?(もう少しゆっくり話していただけますか)
- Could you explain that in a different way?(別の言い方で説明していただけますか)
理解を確認したい
- If I understand correctly, the deadline is Friday, right?(正しく理解できていれば、期限は金曜日ですね)
- Do you mean the cost for the entire project?(プロジェクト全体の費用という意味ですか)
- Let me make sure I understood the next steps.(次の行動を正しく理解できたか確認させてください)
手元に答えがない
- I don’t have the exact figure with me.(正確な数字は今手元にありません)
- I need to confirm that with my team.(チームへの確認が必要です)
- Let me check and get back to you by tomorrow.(確認して明日までに回答します)
聞き返しや保留は、英語力不足を告白する表現ではありません。内容を正確に扱い、仕事を次へ進めるための表現です。
急に質問されたときの回答手順は、英語会議で急に質問されると答えられない人の準備方法も参考になります。
準備5:聞かれそうな質問と短い回答を作る
自己紹介や説明をすると、相手から追加質問が返ってきます。自分の発言には「質問の種」があります。
- 数字を示す → 根拠や変化の理由
- 日程を示す → 遅延時の影響
- 提案を示す → 他案との違い
- 問題を示す → 対策と責任者
- 要望を示す → 必要な予算や期限
回答は「結論・理由・次の行動」の三文へ縮めます。
結論:We recommend Option A.
(A案を推奨します。)理由:It is faster and requires no additional staff.
(より早く、追加人員が不要だからです。)次の行動:We can start a pilot next month.
(来月、試験導入を始められます。)
長い回答を丸暗記せず、結論、数字、理由、期限をメモにします。質問の言い方が変わっても、中心語を拾って同じ回答へつなぐ練習をします。
海外出張で英語プレゼンを行う方は、英語プレゼンの質疑応答が怖い人へ|回答を準備する5ステップもあわせて準備してください。
空港・ホテル・移動の英語は最低限を場面別に
仕事の準備を優先したうえで、移動中に困りやすい表現を整えます。必要なのは旅行英会話集の丸暗記ではなく、自分の旅程にある場面です。
空港・入国
- I’m here on business.(仕事で来ました)
- I’ll be staying for five days.(5日間滞在します)
- I’m staying at the ABC Hotel.(ABCホテルに滞在します)
- Where can I pick up my baggage?(荷物はどこで受け取れますか)
ホテル
- I have a reservation under the name Sato.(佐藤の名前で予約しています)
- Could I have an invoice, please?(請求書をいただけますか)
- Could you call a taxi for me?(タクシーを呼んでいただけますか)
移動・トラブル
- Could you take me to this address?(この住所までお願いします)
- My flight has been delayed.(飛行機が遅れています)
- My baggage hasn’t arrived.(荷物が到着していません)
- Could you write that down for me?(書いていただけますか)
渡航条件、入国手続き、治安、通信手段、保険などは、英語学習とは別に会社の出張規定や公的機関・航空会社の最新案内を確認してください。画面保存、住所、予約番号、緊急連絡先などをオフラインでも見られるようにしておくと、英語だけに頼らず対応できます。
残り期間別|海外出張の英語準備プラン
出発まで1ヶ月以上ある場合
週ごとに目的を分けます。
- 1週目:旅程と業務場面を整理し、必要な英語を絞る
- 2週目:自己紹介、自社説明、会議での発言を作る
- 3週目:想定質問と回答、聞き返し表現を練習する
- 4週目:模擬会議、プレゼン、会食の会話を通して練習する
毎日すべてを勉強するより、準備した短文を繰り返し聞き、見ずに言い、質問へ答える時間を作ります。
出発まで1週間の場合
一般的な単語帳や文法書を広く進めるより、次へ絞ります。
- 自己紹介と担当業務
- 重要会議で言う結論・数字・質問
- 想定質問5問への短い回答
- 聞き返し・確認・保留表現
- 旅程上で必ず使う移動表現
オンライン英会話や社内の英語話者へ、実際の場面で質問役を依頼すると効率的です。教材のフリートークではなく、出張の目的と会議の概要を伝えて練習します。
出発まで3日しかない場合
英語力全体を変えようとせず、失敗したときの影響が大きい場面を守ります。
- 最重要会議で自分が言う三文を完成させる
- 聞き返し・確認・保留を各二つ覚える
- 数字・日付・製品名・役職名の発音を確認する
- 連絡先と資料をすぐ見せられる状態にする
- 同行者と役割分担を決める
「どこからは同僚に補足してもらうか」「専門的な質問は誰が答えるか」を事前に決めることも、実務上の準備です。
現地で英語が聞き取れない・話せないときの対処
準備しても、相手の速度、発音、周囲の音、疲労によって聞き取れない場面はあります。そのときは、わかったふりをしないことが大切です。
- 質問全体ではなく、期限や対象を絞って確認する
- 数字や固有名詞は画面・資料・文字で確認する
- 会議の最後に決定事項を自分の言葉で言い直す
- 会議後に短い確認メールを送る
- 回答できない内容は期限を示して持ち帰る
会議の最後には、次のように確認できます。
Let me summarize the next steps.
(次の行動をまとめさせてください。)We will send the revised plan by Friday, and your team will review it next week. Is that correct?
(当社が金曜日までに修正版を送り、御社が来週確認する、ということで合っていますか。)
流暢に話すことより、合意事項を正確に持ち帰ることを優先してください。
独学で準備できるケースとサポートが役立つケース
出張中の役割が明確で、英語を使う場面を自分で整理でき、短い発言を作って録音・修正できるなら、独学でも準備できます。定型的な社内訪問や、英語が得意な同行者がいる出張なら、市販教材、翻訳ツール、オンライン英会話を組み合わせれば十分な場合もあります。
一方、次の状態なら第三者の支援が役立つことがあります。
- 何を準備すべきか業務場面へ落とし込めない
- 自社や専門業務の説明を簡単な英語へ変えられない
- 重要な商談・プレゼンを一人で担当する
- 質問を聞き取れない原因が音・語彙・内容のどれかわからない
- 出発までの期限が短く、優先順位を絞る必要がある
この場合も、必ず長期の英語コーチングが必要とは限りません。社内の英語話者に資料を確認してもらう、プレゼンだけ専門家へ添削を依頼する、オンライン英会話で数回ロールプレイする方法もあります。
仕事の英語にコーチングを使うか迷う方は、仕事の英語にコーチングは効果がある?目的別の考え方も判断材料にしてください。
海外出張までに何を優先すべきか、一度整理したい方へ
be:RIZEでは、一般的な旅行英会話を最初から広く学ぶのではなく、出張日、現地での役割、会議・商談・プレゼンの内容、現在の聞く・話す力から準備範囲を整理します。
独学、オンライン英会話、社内の支援で十分な場合も含め、出張の目的と期限に合う進め方を重視しています。
まとめ:海外出張の英語は、旅程より先に仕事内容から逆算する
海外出張が決まったら、英語を一から完成させようとする必要はありません。今回の出張で英語を使う場面を洗い出し、仕事への影響が大きい順に準備します。
優先順位は次のとおりです。
- 出張中に英語を使う場面を洗い出す
- 自己紹介と自社・担当業務の説明を作る
- 会議・商談・プレゼンの目的と発言を準備する
- 相手へ確認したい質問を作る
- 聞き返し・確認・保留の表現を練習する
- 想定質問へ短く答える
- 空港・ホテル・移動の英語を最低限整える
英語の準備は、旅行中のすべての会話を予測することではありません。自分が伝えるべき内容、確認すべきこと、今は答えられないときの対処を持っておくことです。
まず旅程表を開き、英語を使う場面へ印を付けてください。その中から「自分が対応できなければ仕事が進まない場面」を三つ選びます。そこから自己紹介、発言、質問、確認表現を作れば、漠然とした不安を具体的な準備へ変えられます。



