英語の前置詞は、なぜ名詞の前に置かれるのでしょうか。
in the room、on the table、with my friend。学校では「前置詞の後ろには名詞を置く」と習います。しかし、語順を規則として暗記するだけでは、会話中にinかatかを考えた瞬間、言葉が止まりやすくなります。
結論からいうと、英語は前置詞で「これからどんな関係を描くか」を先に示し、その後ろの名詞で関係の基準点を置く言語だからです。
in → the roomなら、「内側」という関係を先に出し、その内側を決める基準点としてthe roomを置きます。前置詞は名詞の飾りではなく、二つのものの関係を設定する小さな案内標識です。
前置詞を日本語訳から選ぼうとすると迷います。先に「場所の内側なのか」「面との接触なのか」「誰とのつながりなのか」という関係を思い浮かべ、その景色に合う前置詞を置くと、英語の順番で組み立てやすくなります。
英会話スクール「b わたしの英会話」・英語コーチング「be:RIZE」創業者
前置詞とは?名詞の前で「関係」を予告する言葉
前置詞は、名詞や代名詞の前に置かれ、ほかの要素との位置・方向・時間・所属・手段などの関係を示す言葉です。
- in the box:箱の内側という関係
- on the table:テーブルの面に接している関係
- to the station:駅を到達点とする方向
- from Osaka:大阪を起点とする関係
- with Emi:恵美さんと一緒・結びついている関係
前置詞だけでは関係の種類しか分かりません。inを聞けば「何かの内側」と予測できますが、何の内側なのかはまだ未確定です。後ろにthe boxが来て、初めて景色が完成します。
前置詞=関係を示す → 名詞=その関係の基準点を置く
この処理順が、そのままpre-position、つまり「前に置く言葉」という名称にも表れています。

なぜ名詞の前なのか|英語は関係の種類を先に知りたい
英語は、文の主要な骨格や関係を早めに示し、後ろから具体的な情報を足していく傾向の強い言語です。
The keys are in the bag.
鍵はカバンの中にあります。
英語の順番で受け取ると、次のように意味が更新されます。
- The keys are:鍵が、ある状態にある
- in:その状態は「内側」の関係
- the bag:内側の基準点はカバン
inが先に来ることで、聞き手は「次に、この内側を決める名詞が来る」と予測できます。英語の前置詞は、後ろの名詞を待つための小さな矢印でもあるのです。
日本語との違い|日本語は名詞を先に置き、助詞で関係を示す
日本語では「箱の中に」「机の上に」「友人と」のように、基準となる名詞を先に出し、その後ろの助詞などで関係を示します。
| 言語 | 処理順 | 例 |
|---|---|---|
| 英語 | 関係 → 基準点 | in → the box |
| 日本語 | 基準点 → 関係 | 箱 → の中に |
日本語から英語へ直訳すると、まず「箱」を思い浮かべ、そのあとで「中だからin」と戻って考えがちです。これが、前置詞の手前で止まったり、前置詞を抜かしたりする一因になります。
会話では、日本語を完成させてから並べ替えるのではなく、描きたい関係を先に選ぶ練習が有効です。
- 内側の景色 → in …
- 面との接触 → on …
- 一点として捉える → at …
- 到達点へ向かう → to …
- 起点から離れる → from …
前置詞+名詞で「前置詞句」という一つのかたまりになる
前置詞は、通常、その後ろの名詞・代名詞・動名詞などと組んで前置詞句を作ります。
- in the morning
- after lunch
- for my family
- by studying every day
このとき、名詞は前置詞の目的語と呼ばれます。ただし「動作が届く相手」という動詞の目的語と同じ景色で考える必要はありません。前置詞が作る関係を完成させる基準点、と捉えると分かりやすくなります。
なお、前置詞の後ろには主格ではなく目的格を置きます。
- ○ with me × with I
- ○ for her × for she
- ○ between you and me
名詞の代わりに動作を置きたい場合は、動詞を-ingにして名詞として扱います。
Thank you for helping me.
手伝ってくれてありがとうございます。
forの後ろでhelping meが一つの出来事・対象として置かれています。詳しくは動名詞の意味と使い方もご覧ください。
前置詞句は形容詞・副詞のように働く
「前置詞句」という名前は形の分類です。そのかたまりが文中で何を説明するかによって、形容詞的または副詞的に働きます。
名詞を説明する|形容詞的な働き
The woman by the window is my teacher.
窓のそばにいる女性は私の先生です。
by the windowは、どの女性なのかを後ろから説明しています。英語はまずthe womanという対象を出し、あとから位置関係を足します。
この仕組みは英語の後置修飾で、to不定詞・分詞・関係詞と並べて整理しています。
動作や文全体を説明する|副詞的な働き
We met at the station after work.
私たちは仕事のあと、駅で会いました。
at the stationは「どこで」、after workは「いつ」を補足します。文の骨格はWe met.で完成しており、前置詞句はその出来事の舞台を付け足しています。
つまり、前置詞句は文型のS・V・O・Cそのものとは限りません。場所や時間を表す長い部分があっても、骨格は短いことがあります。これは第1文型SVと修飾語Mの理解にもつながります。
前置詞と副詞の違い|後ろに基準点が必要か
in、on、up、down、overなどは、前置詞にも副詞にもなります。見分けるポイントは、後ろに関係の基準点となる名詞を伴うかどうかです。
- He went into the room.:into+the roomで前置詞句
- Come in.:基準点を言わず、inだけで方向を示す副詞
- Put the book on the desk.:on+the desk
- Put your coat on.:onが動作の仕上がりを示す副詞
「同じ単語なのに品詞が変わる」と暗記するより、基準点を言葉にして置くなら前置詞、文脈から分かるため置かないなら副詞と考えると一本につながります。
前置詞の後ろにthat節を置けないのはなぜ?
前置詞の後ろは、基本的に名詞として扱える対象の席です。そのため、通常のthat節をそのまま置くことはできません。
× We talked about that he was late.
自然な形にするなら、名詞を置くか、the fact that …という名詞のかたまりにします。
○ We talked about his delay.
○ We talked about the fact that he was late.
一方、what節や疑問詞節は名詞のかたまりとして置けます。
It depends on what you need.
それはあなたに何が必要かによります。
句と節の違いや、それぞれが名詞・形容詞・副詞の席へ入る仕組みは、英語の句と節とは?で詳しく解説しています。
文末の前置詞は間違い?|基準点が前へ移動しただけ
Who are you talking to?のように、前置詞が文末に残ることがあります。これは前置詞が「後置詞」に変わったわけではありません。
もとの関係はtalk to someoneです。質問では未知の相手を表すwhoを文頭へ出すため、toだけが文末に残ります。
- You are talking to someone.
- Who are you talking to?
日常会話では自然な形です。かたい文体ではTo whom are you talking?のように前置詞と疑問詞を一緒に前へ出せますが、会話では硬く響きます。
関係代名詞でも同じです。
- the person who I spoke to:自然な会話
- the person to whom I spoke:かたい表現
前置詞の位置が離れて見えても、頭の中ではto+人という関係を復元します。
文末にtoが残っていても、to単体を訳す必要はありません。「誰を到達点として話しているのか」という、もとの関係を取り戻せば大丈夫です。前置詞は位置よりも、何と何をつないでいるかを見るのがコツです。
しゅみすけ(大山俊輔)
前置詞を英語の順番で使う3ステップ
1.まず文の骨格を出す
I left my bag …
私はカバンを置いてきた……。
完璧な日本語訳や場所を考える前に、誰が何をしたかを先に置きます。
2.追加したい関係を決める
「テーブルの面に接している」という景色ならonを選びます。
I left my bag on …
3.基準点となる名詞を置く
I left my bag on the table.
私はテーブルの上にカバンを置いてきました。
骨格 → 関係 → 基準点の順に進めれば、日本語を丸ごと英語へ並べ替える必要がありません。
よくある間違い
前置詞を日本語一語と固定する
atを「〜で」、onを「〜の上に」だけで覚えると、good at Englishやon Mondayで意味がつながりません。訳語ではなく、前置詞が作る関係の景色を中心にします。
自動詞の後ろで前置詞を落とす
× I listened music.
○ I listened to music.
listenは「耳を傾ける」動作を表し、聞く対象との到達関係をtoで作ります。SVOの他動詞と、自動詞+前置詞の違いは第3文型SVOの記事も参考にしてください。
前置詞句の中の名詞を文の目的語と誤認する
She lives in Tokyo.のTokyoはlivesの目的語ではなく、前置詞inの後ろで場所の基準点になっています。文の骨格はSVです。
まとめ|前置詞は関係を先に置く案内標識
- 前置詞は、位置・方向・時間・所属などの関係を示す
- 英語は「関係 → 基準点」の順なので、前置詞を名詞の前に置く
- 日本語は「基準点 → 関係」の順になりやすい
- 前置詞+名詞は前置詞句となり、形容詞・副詞のように働く
- 前置詞の後ろの名詞は、関係を完成させる基準点
- 文末に前置詞が残っても、もとの「前置詞+基準点」の関係を復元する
in the roomを見たら「部屋の中に」と一気に訳す前に、inで内側の関係が開き、the roomでその基準点が決まる流れを感じてみてください。
個々の前置詞のコアイメージと使い分けは、英語の前置詞一覧でまとめています。意味を覚えるだけでなく、関係を先に置く英語の処理順で読むと、それぞれの前置詞が一つの仕組みとしてつながって見えてきます。
前置詞の選択は、単語知識だけの問題ではありません。日本語を完成させてから英語へ並べ替える処理を、骨格・関係・基準点の順に組み直すことで、会話中の迷いを減らせます。
be:RIZEでは、語彙・文法・リスニング・スピーキングの現在地を確認し、日本語話者が英語を前から処理するための学習順を一緒に設計しています。





[…] 前置詞句そのものの作り方と、なぜ前置詞が名詞より先に来るのかは、英語の前置詞はなぜ名詞の前に置く?をご覧ください。 […]