医師に必要な英語力とは?論文・国際学会・外国人患者対応から逆算する勉強法

外国人患者と英語でコミュニケーションする日本人医師

「医学論文なら読める。英文も、時間をかければ書ける。でも国際学会の質疑応答になると、頭が真っ白になる」

「外国人患者さんを前にすると、症状の聞き方や検査の説明が、とっさに英語で出てこない」

医師に必要な英語は、単に医学用語を増やせば身につくものではありません。大学病院や大規模病院では、論文、国際学会、共同研究などのアカデミック英語が求められます。一方、地域の病院やクリニックでは、外国人患者の問診、検査・治療の説明、理解の確認といった臨床コミュニケーションの英語が必要になります。

しかも、この2つは似ているようで、使う力がかなり違います。この記事では、医師が英語を使う場面を整理し、自分の仕事から逆算して何を勉強すべきかを解説します。

しゅみすけ

医師のお客様は、専門知識や英文読解に困っているとは限りません。国際学会では質疑応答、臨床では患者さんへ平易に説明する場面で、知識を即時の英語へ変える必要があります。専門用語を増やすだけでなく、聞く・短く組み立てる・理解を確認する練習が重要です。

目次

医師に必要な英語力は、大きく2つに分かれる

医師の英語学習では、まず「英語を使う目的」を二つに分けると整理しやすくなります。

1. 論文・国際学会・共同研究で使うアカデミック英語

主な場面は次のとおりです。

    – 海外の医学論文やガイドラインを読む

  • 英文論文を書く
  • 査読コメントへ回答する
  • 国際学会で口演・ポスター発表をする
  • 発表後の質疑応答に対応する
  • 海外研究者との共同研究やオンライン会議に参加する
  • 懇親会で研究者と関係をつくる

ここでは、専門用語の正確さ、研究内容を論理的に説明する力、質問の意図を聞き取る力が重要です。

2. 外国人患者対応で使う臨床英語

主な場面は次のとおりです。

    – 本人確認と受診目的の確認

  • 症状の経過や既往歴を聞く
  • 服薬状況やアレルギーを確認する
  • 検査の目的や流れを説明する
  • 治療方針、選択肢、今後の予定を説明する
  • 患者が理解できたか確認する
  • 必要に応じて通訳や多言語資料を利用する

患者対応では、難しい医学用語を使うより、短く、平易に、誤解が起きにくい表現へ言い換える力が重要になります。

論文・国際学会と外国人患者対応に取り組む医師のイラスト

「医学英語を知っている」と「その場で使える」は別の能力

論文を読むときは、立ち止まり、辞書や文献を確認できます。論文を書くときも、推敲や校正ができます。

しかし、国際学会の質疑応答や外国人患者との会話では、相手の英語をその場で聞き取り、要点を判断し、返答を組み立てなければなりません。

つまり必要なのは、知識量だけではありません。

    1. 相手の発言から重要な情報を拾う

  1. 自分が伝える内容を一つに絞る
  2. 短い英文を組み立てる
  3. 相手の反応を見て言い換える
  4. 理解できたかを確認する

この一連の処理を、限られた時間で行う練習が必要です。

大学病院・大規模病院で求められやすい英語

大学病院や大規模病院では、診療だけでなく研究・教育・管理の役割が重なります。

若手医師であれば抄録作成、症例報告、ポスター発表。中堅以降であれば口演、座長、海外研究者との共同研究、国際共同治験や部門会議など、英語の用途が広がっていきます。

この環境で優先したいのは、次の三つです。

論文を「読む」だけで終わらせない

論文を読んだら、研究目的、方法、結果、臨床的な意味を英語で1〜2文ずつ説明してみます。読む力を話す力へ橋渡しする練習です。

発表原稿より、質疑応答の準備に時間を使う

発表原稿は準備できますが、質疑応答は完全には台本化できません。想定質問を集め、結論を一文で答えてから補足する練習が有効です。

国際学会の発表・質疑応答・懇親会に絞った対策は、国際学会の英語が聞き取れない|発表・質疑応答・懇親会に備える勉強法でも詳しく解説しています。

共同研究の会議では「確認する英語」を持つ

聞き返しや確認を、能力不足と考える必要はありません。

    – “Could you clarify what you mean by that?”

  • “If I understand correctly, your main concern is …”
  • “Let me confirm the next step.”

このような表現は、認識のずれを防ぎ、会議を前へ進めるための実務です。

地域の病院・クリニックで求められやすい英語

地域医療では、海外学会へ行く機会が多くなくても、外国人患者の来院が突然発生します。常に英語が話せるスタッフや医療通訳がいるとは限りません。

だからこそ、幅広い英会話を漠然と勉強するより、よく起きる診療場面を選び、院内の仕組みとセットで準備するほうが現実的です。

最初に準備したい短い表現

    – “Could you describe what you are feeling in your own words?”

  • “When did the symptoms start?”
  • “Are you taking any medications?”
  • “Do you have any allergies?”
  • “I’d like to explain the purpose of this test.”
  • “To make sure I explained it clearly, could you tell me what you understand?”
  • “I’d like to use a professional interpreter so we can communicate accurately.”

重要なのは、例文を暗記して終わることではありません。患者の返答を聞き、追加質問をし、必要なら別の言い方へ変えるロールプレイが必要です。

専門家には正確に、患者には平易に伝える

同じ医学的内容でも、研究者同士と患者への説明では言葉の選び方が変わります。

場面 優先すること 英語の特徴
論文・学会 科学的な正確さ、論理、限定条件 専門用語、定義、数値、根拠
共同研究会議 認識合わせ、意思決定、次の行動 要約、確認、合意形成
外国人患者対応 分かりやすさ、不安への配慮、理解確認 平易な語、短い文、言い換え
通訳を介した診療 情報の正確な受け渡し 一文を短くし、患者へ直接話す

患者に伝える英語では、専門用語を日常語へ変換する練習が欠かせません。「英語が難しい」のではなく、「専門知識を非専門家向けに言い換える作業」が難しい場合も多いからです。

外国人患者対応を、医師個人の英語力だけに背負わせない

外国人患者との医療コミュニケーションでは、安全性が最優先です。複雑な説明、重要な意思決定、同意確認などを、医師個人の英語力だけで乗り切ろうとするのは適切ではありません。

院内ルールに従い、必要に応じて医療通訳、電話・遠隔通訳、多言語説明資料などを利用します。厚生労働省は、医療機関向けの外国人患者受入れのためのマニュアルや、問診票・説明書などの多言語資料を公開しています。

英語学習の目的は、通訳を不要にすることではありません。自分で対応できる範囲を広げつつ、支援が必要な場面を判断し、適切な仕組みへつなぐことです。

医師の英語勉強法|仕事から逆算する7ステップ

1. 自分の役割を書き出す

診療、研究、教育、管理のうち、英語が必要なのはどこかを整理します。「医師の英語」全体を一度に学ぼうとしないことが大切です。

2. 次に来る具体的な場面を一つ選ぶ

「3か月後の国際学会」「外国人患者の初診」「海外研究者との定例会議」など、期限と場面を決めます。

3. 場面ごとの表現を集める

大きな医学英単語帳を最初から覚えるより、自分が実際に使う質問、説明、確認表現を集めます。

4. 専門内容を平易な英語へ言い換える

自分の研究を専門外の医師へ説明する版、一般の人へ説明する版の二つを作ると、言い換える力が鍛えられます。

5. 予想外の質問を含むロールプレイをする

準備した文を読むだけでは、実戦力は伸びません。相手役に追加質問や聞き返しをしてもらい、その場で対応します。

6. 複数のアクセントと話速に慣れる

国際学会でも臨床でも、英語話者の背景は多様です。一つの教材や一人の講師の発音だけに慣れないようにします。

7. 実務後に記録する

聞き取れなかった表現、言えなかった一文、説明が長くなった場面を記録します。その記録が、次に学ぶべき内容です。

立場別の優先順位

研修医・若手医師

症例提示、基本的な問診、抄録・ポスター、短い自己紹介を優先します。完璧な英語より、定型場面を確実に回せることが先です。

大学病院の医師・研究医

論文の要約、発表、質疑応答、共同研究会議を重点的に練習します。発表原稿の添削だけでなく、想定外の質問への反応速度を鍛えます。

総合病院の医師

外国人患者の問診・説明と、必要に応じて学会・海外連携を組み合わせます。院内の通訳・多言語支援の利用手順も確認します。

地域病院・クリニックの医師

頻度の高い診療場面に絞り、短い質問、平易な説明、理解確認を準備します。受付・看護師を含めた動線で練習すると実用的です。

AIを使うなら、情報管理を最優先にする

生成AIは、一般化した想定質問の作成、公開済み抄録を題材にした質疑応答練習、患者向けの平易な表現案づくりなどに活用できます。

ただし、患者を特定できる情報、診療記録、未公開の研究データ、査読中の文書などを、所属組織の許可なく外部サービスへ入力してはいけません。必ず勤務先の規程と承認された環境に従ってください。

独学で伸びにくいのは「その場で返す力」

医師は、自分で学び、知識を体系化する力が高い職業です。一方で、英語では知識を増やすだけでは解決しにくい部分があります。

    – 相手の質問を一度で聞き取る

  • 要点を短く返す
  • 分からないときに確認する
  • 専門用語を平易に言い換える
  • 緊張した状態でも会話を続ける

これらは、実際の仕事に近い条件で反復し、フィードバックを受けることで伸びます。会議や発表前の準備方法は英語会議の準備方法、仕事に合わせた伴走については仕事の英語にコーチングが効果的な理由も参考にしてください。

製薬会社や医療関連企業との仕事が多い方には、製薬会社で必要な英語力とは?も関連します。

よくある質問

医師はTOEICで何点あれば十分ですか?

必要な点数は目的によります。TOEICは基礎力を確認する材料になりますが、論文執筆、学会の質疑応答、患者への説明力を直接保証するものではありません。目標場面で実際にできるかを別に確認しましょう。

医学英単語から始めるべきですか?

自分の診療科や研究領域で頻出する語は必要です。ただし、すでに専門知識がある医師ほど、単語追加よりも「聞く・短く返す・平易に言い換える」練習が優先になることがあります。

発表原稿を丸暗記すれば国際学会を乗り切れますか?

発表部分には役立ちますが、質疑応答には十分ではありません。想定質問、聞き返し、結論を先に答える練習を組み合わせてください。

外国人患者には自分の英語だけで対応すべきですか?

いいえ。状況、説明内容、患者の理解度に応じて、院内ルールに従い、医療通訳や多言語資料などを利用してください。英語力と支援体制は補完関係です。

医師として必要な英語を、実務から整理しませんか?

be:RIZEでは、論文、国際学会、質疑応答、外国人患者対応など、実際に英語を使う場面と期限から学習順を設計します。

無料カウンセリングの前に知っていただきたいこと

医師に必要な英語は、勤務先や役割によって変わります。

大学病院・大規模病院で論文、国際学会、共同研究に備えるのか。地域の病院・クリニックで外国人患者への問診・説明に備えるのか。まずは次に起きる場面を一つ決めてください。

そのうえで、専門用語を増やすだけでなく、聞き取る、短く話す、平易に言い換える、理解を確認する練習へ進みます。

be:RIZEでは、医師の診療科、研究テーマ、学会予定、外国人患者対応など、実際の仕事から逆算して学習内容を設計します。一般的な英会話ではなく、「次の現場で使える英語」を一緒につくりたい方は、ぜひご相談ください。

※本記事は英語学習とコミュニケーション準備に関する一般的な情報です。個別の診療、医療安全、法的判断を扱うものではありません。実際の対応は所属医療機関の規程・手順に従ってください。

しゅみすけ(大山俊輔)

しゅみすけ(大山俊輔)
英語コーチング「be:RIZE」創業者。外資系企業4社での勤務と米国MBA留学を経験。

外国人患者への問診・検査・説明・理解確認でそのまま使える短い表現は、b-cafeの「医師・医療現場で使う英語フレーズ」で診察の流れに沿って紹介しています。

外国人患者への問診・検査・説明・理解確認でそのまま使える短い表現は、b-cafeの「医師・医療現場で使う英語フレーズ」で診察の流れに沿って紹介しています。

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