経理や財務の仕事は、日本語で行う限り問題なくできる。仕訳、月次決算、予算管理、連結決算の流れも理解している。それなのに海外子会社を担当した途端、英語のメール一通に時間がかかり、オンライン会議では数字の背景を十分に確認できない。
連結パッケージの提出が遅れている。前年差や予算差の理由が説明と合わない。債権債務の残高が一致しない。監査資料が不足している。日本語ならすぐ確認できることでも、英語になると「強く言いすぎないか」「自分の理解が間違っていないか」が気になり、質問や催促が曖昧になることがあります。
経理・財務で必要な英語は、専門用語を英訳できることだけではありません。数字の異常を見つけ、原因を質問し、認識を合わせ、期限と次の行動を合意する力です。
この記事では、海外子会社の管理や連結決算で英語が必要になった経理・財務担当者へ、現在の専門知識を実務英語へつなげる勉強法を解説します。
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私も外資系の会計事務所、投資銀行、ベンチャーキャピタルなどで仕事をしてきました。数字や会計の知識があっても、それを英語で確認・説明・合意する処理は別に練習する必要があります。一方、経理財務は話題と目的が比較的明確なので、実務から逆算しやすい分野でもあります。
英語コーチング「be:RIZE」創業者。外資系企業4社での勤務と米国MBA留学を経験。
海外子会社・連結決算で英語が必要になる場面
海外子会社を持つ企業では、英語を話す頻度が高くなくても、決算の重要な局面で英語が必要になります。
- 海外子会社への月次・四半期・年度決算スケジュールの連絡
- 連結パッケージの提出依頼と進捗確認
- 予算差・前年差・見込み差の理由確認
- 勘定科目、会計処理、計上時期の認識合わせ
- 債権債務・内部取引・未実現利益などの照合
- 監査人から求められた資料の依頼と回答
- 海外CFOや現地経理担当者とのオンライン会議
- 日本本社の経営会議へ海外数字を説明するための情報収集
読み書きだけで終わる会社もあれば、差異の原因や修正方法を会議で合意する会社もあります。まず、自分が英語で担当する動作を洗い出す必要があります。
経理・財務の英語は専門用語だけでは足りない
accounting、finance、consolidated financial statements、accounts receivableなどの用語を知ることは役立ちます。しかし、実務で止まりやすいのは用語そのものより、数字の背景を確認するときです。
たとえば、売上が予算を下回った理由を知りたいとき、単に “Why did sales decrease?” と聞くだけでは十分な情報が返らないことがあります。数量、単価、為替、顧客、製品、計上時期など、確認したい切り口を分ける必要があります。
- Is the variance mainly due to volume or price?
- Was any revenue moved to the next month?
- Which customers account for most of the decrease?
- Does this figure include the foreign exchange impact?
- When can you send the revised package?
必要なのは難解な英文ではありません。会計上の論点を分解し、短い質問で一つずつ確認する力です。
経理・財務担当者が英語で苦戦しやすい理由
1.日本語の経理用語をそのまま英語へ置き換えようとする
日本語の用語と英語の用語が常に一対一で対応するとは限りません。会社の会計方針、使用する基準、システム、勘定科目表によって表現も変わります。一般的な訳語を覚えるだけでなく、自社の連結マニュアル、過去メール、勘定科目表で実際に使われている表現を確認します。
2.丁寧に書こうとして依頼内容と期限がぼやける
英語へ自信がないと前置きを長くしがちです。しかし決算中に必要なのは、対象、問題、必要な対応、期限が明確なメールです。「修正版を送ってください」だけでなく、どのシートのどの項目を、いつまでに、どの状態へ直すのかを分けます。
3.数字は読めても、差異理由の説明を聞き取れない
現地担当者の説明には、顧客名、製品名、社内略語、地域特有の事情が含まれます。数字は画面で追えても、どの要因が一時的で、どの要因が今後も続くのかを保持できないことがあります。会議前に確認項目を分け、回答を書き込む枠を用意すると処理しやすくなります。
4.理解できなかった部分を推測して処理を進める
決算では小さな認識違いが後工程へ影響します。分からないときに確認する英語は、会話力の弱さではなく内部統制の一部です。“Let me confirm my understanding.” “Do you mean this should be recorded in the next period?” のように、自分の理解を言い直して確認します。
5.通常業務と決算繁忙で英語学習が後回しになる
決算期に一般的な英語教材を進める余裕はほとんどありません。だからこそ、実際のメール、会議、差異確認を教材へ変えます。その日に時間がかかった一文や確認できなかった質問を保存し、次回の月次決算で再利用します。
繰り返す決算業務を英語教材に変える
経理・財務の英語は、仕事のサイクルが繰り返される点を活用できます。毎月または四半期ごとに似た依頼、質問、回答が発生するためです。

海外子会社・連結決算に備える英語の勉強法
1.一年間の決算・予算・監査業務を書き出す
月次決算、四半期決算、年度決算、予算、見込み更新、監査など、英語を使う時期と相手を並べます。頻度だけでなく、失敗した場合の影響も考えます。毎月行う連結パッケージの確認や、直近の監査対応など、重要度の高い場面から選びます。
2.過去のメールと資料から自社表現を集める
市販の経理英語集だけでなく、自社で承認された連結マニュアル、決算指示、過去のメール、監査依頼資料から頻出表現を集めます。機密情報や個人情報を外部サービスへ入力しないよう、社内ルールにも注意してください。
3.メールを「事実・問題・依頼・期限」の四つへ分ける
長い日本語をそのまま訳さず、何が起きているか、何が問題か、何をしてほしいか、いつまでかへ分けます。
We found a difference between the intercompany balances.
Please check the attached details and update the reporting package.
Could you send the revised file by 3 p.m. tomorrow?
この骨格を複数の案件へ再利用します。丁寧さは残しながら、行動が分かる文章へします。
4.差異確認を原因別の質問へ分解する
売上差異なら数量・単価・為替・顧客・計上時期、費用差異なら人員・外注・一時費用・配賦・為替など、自社で頻出する原因別に質問を準備します。質問を一度に詰め込まず、回答を受けて次の質問へ進みます。
5.会議では回答を要約し、次の行動を確認する
説明を聞いた後、“So the main reason is…” と要約し、“You will send the revised file by…” と担当と期限を確認します。聞き取るだけで終わらず、会議の最後に認識を言葉へ戻すことが大切です。
6.決算後に再利用できた表現だけを残す
単語帳を増やし続けるのではなく、実際に通じた依頼、確認、催促、要約をテンプレートとして残します。次回の決算では数字と期限を変えて使用し、必要に応じて改善します。
海外子会社へ期限を明確に伝える方法
海外子会社へ締切を守ってもらう必要がある一方、強い英語を使うことに抵抗がある人もいます。重要なのは命令口調にすることではなく、決算全体への影響と必要な行動を明確にすることです。
- 何が未提出なのか
- 本来の期限はいつだったのか
- いつまでに必要なのか
- 遅れる場合は何を連絡してほしいのか
- 本社の連結スケジュールへどう影響するのか
“This is a reminder…” だけで終わらず、“We need the file to complete the group consolidation.” のように理由を加えると、相手も優先順位を判断しやすくなります。
専門知識・英語知識・英語処理を分けて考える
英語で説明できないと、会計知識まで不足しているように感じることがあります。しかし、次の三つは分けて考えます。
- 専門知識:会計処理や数字の問題を判断できるか
- 英語知識:必要な語彙と文の骨格を知っているか
- 英語処理:会話中に聞き、確認し、短く説明できるか
専門知識があるなら、一般的なビジネス英語を広く学び直す前に、担当業務で繰り返す動作へ英語を接続します。会議全般で発言できない方は、外資系で働いているのに英語が話せない人の勉強法も参考になります。
独学・オンライン英会話・英語コーチングの使い分け
独学は、過去のメールや資料から頻出場面を抽出し、自分で短い質問や依頼へ直せる人に向いています。オンライン英会話では、単なるフリートークではなく、差異説明、提出遅延、監査資料の不足などを匿名化したうえでロールプレイします。
英語コーチングは、決算期が迫っている、どの技能から戻るべきか分からない、教材を増やしても実務で使えない場合の選択肢です。業務カレンダーと英語力を並べ、次の決算までに必要な聞き取り・文作り・発音・対話練習を組みます。仕事の英語にコーチングが合うか迷う方は、仕事の英語にコーチングは効果がある?もご覧ください。
経理・財務の英語に関するよくある質問
経理・財務の英語は何から勉強すればよいですか?
最初に自社の決算資料、連結マニュアル、過去メールから、毎月繰り返す依頼と質問を集めます。そのうえで、基礎文法、数字・日付の聞き取り、短い質問、確認、要約を練習します。用語集を最初からすべて覚える必要はありません。
簿記や会計知識があれば、英語は単語だけで対応できますか?
資料を読む場面では専門用語が大きく役立ちます。しかし、差異理由を聞く、処理を確認する、修正と期限を合意するには文の骨格と対話処理が必要です。知っている用語を質問・説明・確認へ変える練習を行いましょう。
連結決算の繁忙期でも英語を勉強できますか?
新しい教材へまとまった時間を使うのではなく、その日の実務から一つだけ保存します。時間がかかったメール、聞き取れなかった説明、曖昧になった依頼を短く作り直し、翌日または次回の決算で使います。
まとめ|経理・財務の専門性を英語の確認と合意へつなげる
海外子会社や連結決算を担当して英語に困るのは、経理・財務の能力がなくなったからではありません。数字から問題を見つける専門性を、英語の質問・説明・確認へ変える途中で処理が止まっているだけです。
まず一年間の業務を並べ、次の決算で最も重要な場面を一つ選びます。過去資料から自社表現を集め、メールを事実・問題・依頼・期限へ分け、会議では回答を要約して次の行動を確認します。繰り返す決算業務そのものを教材にすれば、学んだ英語を毎月改善できます。
be:RIZEでは、経理・財務を含む実際の仕事の場面から、必要な英語と学習順を設計します。受講を前提にせず現在地を整理したい方は、無料カウンセリングの前に知っていただきたいことをご覧ください。
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