英語のリテリング(retelling)とは、読んだり聞いたりした内容を理解し、原文を見ずに自分が使える英語で伝え直すトレーニングです。原文を一字一句覚えるのではなく、登場人物・出来事・理由・結果などの要点を保持し、短い英文へ組み直します。
「教材の英文は分かるのに、自分の言葉では説明できない」「音読やシャドーイングはできるが、会話になると言葉が出ない」という人に向きます。ただし、最初から長い話を流暢に再現する必要はありません。誰が・何をした・どうなった、の三点を主語+基本動詞の短文で話すところから始められます。
リテリングは、難しい単語へ言い換える練習ではありません。むしろ、元の英文を全部覚えなくても、場面を思い出し、知っている基本語で説明できるようにする練習です。短くても相手に筋が伝われば成功です。
英会話スクール「b わたしの英会話」・英語コーチング「be:RIZE」創業者
英語のリテリングとは?
retellは「もう一度話す」「語り直す」という意味です。英語学習のリテリングでは、物語、会話、ニュース、動画などの内容を理解した後、原文やスクリプトを閉じ、自分の言葉で再構成して話します。
たとえば、原文に次の内容があったとします。
- 女性が駅へ向かっていた
- 途中で財布を落としたことに気づいた
- カフェの店員が見つけて保管していた
原文の表現を完全に覚えていなくても、次のように話せます。
A woman was going to the station. Then she noticed that she had lost her wallet. A café worker found it, so she got it back.
もっと初級なら、A woman went to the station. She lost her wallet. A café worker found it.でも構いません。まず出来事の骨格を伝え、慣れたら時間・理由・気持ちなどを後から足します。
リテリングで期待できる六つの効果
1.理解した英語をアウトプットへ移せる
読める・聞けるだけだった内容を、自分で取り出して英文にする経験が増えます。インプットと自由会話の間にある段差を小さくできます。
2.要点を選ぶ力が育つ
すべての単語を覚えようとせず、誰が、何をした、結果はどうなった、という中心情報を選ぶようになります。
3.知っている基本語で言い換えられる
原文の難しい語を忘れても、より簡単な動詞や短文で説明します。英語の言い換えトレーニングにもつながります。
4.話の順番を作れる
First、Then、After that、Finally、because、soなどを使い、出来事や理由を相手が追いやすい順番で話す練習になります。
5.リスニングの理解度を確認できる
音は聞こえていても、話の筋を説明できなければ内容処理が不十分かもしれません。リテリングによって、音声知覚と内容理解を分けて確認できます。
6.自分の意見へ移りやすくなる
内容を伝え直した後に、I think…、I liked…、It reminded me of…と一言足すことで、教材の話から自分の会話へ広げられます。
要約・暗唱・リプロダクションとの違い
| 方法 | 中心となる作業 | 原文との距離 |
|---|---|---|
| 要約 | 重要情報を短く圧縮する | 短さと要点を優先 |
| 暗唱 | 覚えた文章を原文どおり言う | 原文へ最も近い |
| リプロダクション | 意味と骨格から見本に近い英文を再構築する | 語順・表現をなるべく保つ |
| リテリング | 内容を自分が使える英語で伝え直す | 内容を保ち、表現は変えてよい |
| 自由会話 | 自分の体験・意見・質問をやり取りする | 原文から離れてよい |
リプロダクションで見本に近い英文を再現できるようになったら、表現の自由度を上げてリテリングへ進みます。詳しい前段階は英語リプロダクションのやり方をご覧ください。
要約とリテリングは重なりますが、要約は情報を短くすることが中心、リテリングは相手に話して伝えることが中心です。短い素材なら、要約せず出来事を順番どおり話してもリテリングになります。
英語リテリングの正しいやり方|7ステップ

ステップ1.短く理解できる素材を選ぶ
初心者は30秒〜1分程度の会話や物語、三〜五文の英文から始めます。未知語が多いニュースや長い動画では、内容把握だけで負荷が上がります。音声を使うならスクリプトがある教材を選びます。
ステップ2.語彙・文法・内容を確認する
素材を一〜二回読んだり聞いたりし、誰が何をしたかを確認します。理解が曖昧なまま話そうとすると、記憶と推測の練習になります。長い文はサイトトランスレーションで前から場面を作ってもよいでしょう。
ステップ3.要点を三つだけ選ぶ
最初は次の三つで十分です。
- 誰・何についての話か
- 何が起きたか
- 最後にどうなったか
メモを使う場合も、完成した英文を書かず、人物・行動・結果を表すキーワードを一〜三語ずつ残します。
ステップ4.教材を閉じ、場面を順番に並べる
原文の文を思い出そうとするより、頭の中で出来事の映像を並べます。First、Then、Finallyの三箱へ場面を入れるように考えると、話の筋を保ちやすくなります。
ステップ5.知っている基本語と短文で話す
一文を長くせず、主語+動詞から始めます。難しい語が出なければ、より簡単な語へ言い換えます。止まったら全文をやり直さず、次の短文へ進みます。
ステップ6.原文と比較し、内容と英語を修正する
話した内容を録音できれば聞き直します。原文と比べるときは、次の順で確認します。
- 重要な出来事が抜けていないか
- 人物・時間・因果関係を間違えていないか
- 主語と動詞があるか
- 時制が大きく崩れていないか
- 同じ語の繰り返しで意味が曖昧になっていないか
原文と表現が違っても、内容が正しく伝われば問題ありません。修正は一〜二点に絞り、もう一度話します。
ステップ7.感想・自分の経験を一言足す
I think it was a good decision.、I had a similar experience.、I want to visit the place.など、一文だけ自分の反応を加えます。教材の再説明から、実際の会話へ踏み出す段階です。
リテリングで話せなくなる一番の原因は、原文を上手に言い換えようとしすぎることです。言い換えより先に、場面を三つ選んでください。人・出来事・結果が決まれば、短い基本文を置いていけます。
英会話スクール「b わたしの英会話」・英語コーチング「be:RIZE」創業者
初心者が使えるリテリングの型
物語・出来事の基本型
- This story is about …:これは〜についての話です
- First, …:最初に〜
- Then, …:その後〜
- Finally, …:最後に〜
- In the end, …:最終的に〜
理由・結果をつなぐ型
- … because …:〜、なぜなら…
- So, …:そのため〜
- That is why …:それが〜の理由です
感想を足す型
- I think …:私は〜と思います
- I liked …:私は〜がよかったです
- I was surprised that …:〜に驚きました
- It reminded me of …:それで〜を思い出しました
接続表現を大量に覚える必要はありません。最初はFirst、Then、Finally、because、so、I thinkの六つで十分です。
リテリングで効果が出ない七つの原因
原文を一字一句思い出そうとする
暗唱に近づき、少し忘れると止まります。文ではなく場面と要点を保持します。
最初から長い素材を使う
情報量が増え、英語を作る前に内容を忘れます。30秒程度、三つの出来事から始めます。
メモへ英文を全部書く
読み上げになり、自分で組み立てる処理が減ります。メモは名詞・動詞・順番を示すキーワードだけにします。
難しい単語を探し続ける
正解の一語を探すほど沈黙が長くなります。知らない語は、物・人・行動・目的などへ分け、基本語で説明します。
長い一文で話そうとする
文法と記憶の負荷が上がります。一つの出来事を一文で話し、後から理由や場所を足します。
録音も比較もせず、言いっぱなしにする
内容の抜けや同じ誤りへ気づきにくくなります。一度話した後、重要な一〜二点だけ直します。
感想を加えず終わる
教材内容の再説明だけでは会話への転用が弱くなります。最後に自分の意見・経験・質問を一つ足します。
毎日15分のリテリング練習メニュー
- 3分:短い素材を読み聞きし、大意を確認
- 2分:人物・出来事・結果の三点を選ぶ
- 1分:キーワードだけメモする
- 3分:教材を閉じ、30秒〜1分で話して録音
- 3分:原文・録音を比べ、内容と英語を一〜二点修正
- 2分:もう一度話す
- 1分:自分の感想を一文足す
毎回新しい素材へ進む必要はありません。同じ話を翌日にもう一度行い、メモを減らし、最後に自分の意見を増やす方法も有効です。
素材別|リテリングの作り方
| 素材 | 選ぶ要点 | 最後に足すもの |
|---|---|---|
| 日常会話 | 誰が・何を相談し・どう決めたか | 自分ならどうするか |
| 短い物語 | 登場人物・問題・結末 | 好きな場面・教訓 |
| 旅行動画 | 場所・したこと・印象 | 行きたいか、経験があるか |
| ニュース | 出来事・原因・影響 | 自分の意見や疑問 |
| 仕事の説明 | 目的・手順・結果 | 次の行動・提案 |
日常英会話が目的なら、硬いニュースだけで練習せず、会話・旅行・仕事・身近な出来事も使います。自分が実際に話す内容に近いほど、転用しやすくなります。
be:RIZEではリテリングをどう使うか
be:RIZEでは、リテリングを「長く流暢に話せるか」の試験にしません。学習者が今持っている単語と文法で、内容を相手へ届ける設計を作ります。
- 内容を保持できないなら、素材を短くする
- 英文の骨格が作れないなら、リプロダクションへ戻る
- 難しい語で止まるなら、基本語への言い換えを練習する
- 話が飛ぶなら、First・Then・Finallyの三点へ戻る
- 教材の説明で終わるなら、自分の経験・意見を一文足す
いきなり自由会話へ飛ぶのではなく、見本ありの再現、内容の伝え直し、自分の話という順に補助を外します。アウトプット全体の順番は英語スピーキング大全でも整理しています。
リテリングのゴールは、原文より上手な英語を話すことではありません。相手が知らない内容を、自分の知っている英語で届けることです。最後に感想を一文足すと、「教材を再生する練習」から「自分が会話する練習」へ変わります。
英会話スクール「b わたしの英会話」・英語コーチング「be:RIZE」創業者
よくある質問
原文と違う単語を使ってもよいですか?
問題ありません。人物、出来事、理由、結果などの内容が正しく保たれていれば、より簡単な語へ変えて構いません。ただし意味が変わっていないかは原文と比較します。
日本語で要点を考えてから英訳してもよいですか?
初期の確認として短い日本語メモは使えますが、完成した日本語文を作ると英訳作業になりやすくなります。人物・動作・結果を絵や英語のキーワードで保持する方向へ移します。
何秒くらい話せばよいですか?
初心者は三文、30秒以内から十分です。内容の筋を保てるようになったら、理由・場所・感想を加えて一分へ伸ばします。長さより伝わり方を優先してください。
文法の間違いはすぐ直すべきですか?
最初の発話中は止まりすぎず、録音後に意味へ影響する誤り、主語・動詞・時制から一〜二点を直します。すべてを一度に直すと、話す流れが消えます。
一人でも練習できますか?
できます。スマートフォンで録音し、原文と比較します。慣れたら同じ内容を相手へ話し、質問を一つ受けると実際の会話へ近づきます。
まとめ|原文ではなく、場面を自分の英語で伝える
英語のリテリングは、文章を暗記して再生する練習ではありません。読んだ・聞いた内容から要点を選び、教材を閉じ、知っている基本語と短文で相手へ伝え直すトレーニングです。
- 30秒〜1分の理解できる素材を使う
- 人物・出来事・結果の三点を選ぶ
- 完成文ではなくキーワードだけメモする
- First・Then・Finallyで順番を作る
- 難しい語を基本語へ言い換える
- 原文と比較し、重要な一〜二点だけ修正する
- 最後に自分の感想・経験を一文足す
サイトトランスレーションで前から理解し、リプロダクションで英文の骨格を再構築し、リテリングで自分の表現へ広げる。この順番で、理解した英語を実際の会話で使える形へ変えていきましょう。




