学会発表を英語ですることになり、「原稿はどう組み立てればいい?」「出だしや締めは何と言えばいい?」「原稿を暗記しても本番で飛びそう」と不安になっていませんか。
研究内容そのものは十分に理解していても、それを英語で短く、聞き手が追える順番に並べ直すのは別の技能です。特に論文を書くことに慣れている人ほど、正確さを優先して一文が長くなり、口頭では伝わりにくくなることがあります。
この記事では、英語での学会発表を出だし・研究背景・方法・結果・締めの5段階に分け、原稿の作り方、スライドを説明するフレーズ、練習方法まで整理します。ポスター発表の30秒・2分説明や会話フレーズは、国際学会のポスター発表で使う英語で解説しています。国際学会全体の準備や質疑応答については、国際学会の英語総合ガイドもあわせてご覧ください。
英語での学会発表は「原稿を書く力」と「話す力」を分ける
英語の学会発表では、きれいな英文原稿を作れば準備が終わるわけではありません。必要なのは、少なくとも次の三つです。
- 研究の流れを、聞き手が追える順番に整理する
- 書き言葉を、口から出しやすい短い英語へ変える
- スライドを見ながら、原稿に依存しすぎず説明する
論文は、読者が前の文へ戻ったり、図表を見直したりできます。しかし口頭発表は、その場で流れていきます。だからこそ、情報量を増やすより、今どこを説明しているのかが分かる道標を入れることが重要です。
英語の学会発表を5段階で組み立てる

発表分野によって詳細な構成は異なりますが、口頭発表の基本的な流れは次の5段階で整理できます。
| 段階 | 役割 | 聞き手に伝えること |
|---|---|---|
| 1.Opening | 発表を始める | 挨拶・演題・全体の流れ |
| 2.Background | 研究課題を共有する | 背景・問題・目的 |
| 3.Methods | 研究方法を説明する | 対象・条件・手順・分析方法 |
| 4.Results | 結果を示す | 重要な数値・変化・比較 |
| 5.Conclusion | 意味をまとめる | 結論・限界・今後の課題 |
1.出だし|挨拶・演題・発表の流れを示す
冒頭では、凝った表現よりも、聞き手が安心して発表へ入れる明確さを優先します。
Good morning. Thank you for the introduction.
本日はおはようございます。ご紹介ありがとうございます。Today, I’d like to talk about our recent study on …
本日は、〜に関する私たちの最近の研究についてお話しします。I’ll begin with the background, then explain our methods and results, and finally discuss the implications.
まず背景をご説明し、次に方法と結果、最後にその意味についてお話しします。
I’m going to explain …でも間違いではありませんが、学会発表ではI’d like to talk about …やThis presentation focuses on …のような表現も自然です。大切なのは、最初の30秒を自分の言葉として安定して言えることです。
2.研究背景と目的|「何がまだ分かっていないか」を示す
背景説明では、知識をすべて紹介する必要はありません。聞き手が理解すべきなのは、既に分かっていることと、まだ分かっていないこと、そのため今回何を調べたのかです。
Previous studies have shown that …
先行研究では、〜が示されています。However, it remains unclear whether …
しかし、〜かどうかはまだ明らかではありません。Therefore, the aim of this study was to investigate …
そこで本研究では、〜を検討することを目的としました。
この3文だけでも、既知 → 空白 → 今回の目的という筋道ができます。背景を長くするより、研究上の問いへ早く到達するほうが、聞き手は発表を追いやすくなります。
3.方法|対象・条件・手順を箱に分ける
方法の説明は情報が密集しやすいため、対象、研究デザイン、主要な条件、評価方法に分けます。細部をすべて読み上げず、解釈に必要な条件へ絞りましょう。
We included 120 participants who …
〜に該当する120名を対象としました。Participants were divided into two groups based on …
参加者は〜に基づいて2群に分けられました。The primary outcome was …
主要評価項目は〜でした。We analyzed the data using …
データは〜を用いて分析しました。
受動態は学術英語でよく使われますが、口頭ではWe measured …やWe compared …のように主語と動作を明確にすると、文章が短くなります。
4.結果|グラフを読み上げず、変化と比較を伝える
結果では、スライドに見えている数値を端から読むのではなく、「どこを見るべきか」「何が変わったか」「何と比べて違うか」を言葉にします。
As you can see on the left, …
左側をご覧いただくと、〜が分かります。The most important finding was that …
最も重要な結果は、〜でした。Compared with the control group, the treatment group showed …
対照群と比較して、治療群では〜が見られました。There was no significant difference between the two groups.
2群間に有意差はありませんでした。
結果と解釈を混ぜると、聞き手は「観察された事実」と「発表者の考え」を区別しにくくなります。まずWe found …で結果を示し、そのあとにThis may suggest …で解釈を加えると明確です。
5.締め|結論を一文に戻し、意味を示す
発表の最後では、情報を追加し続けるのではなく、研究目的に対する答えへ戻ります。
In conclusion, our findings suggest that …
結論として、本研究の結果は〜を示唆しています。One limitation of this study is …
本研究の限界の一つは〜です。Further research is needed to determine whether …
〜かどうかを明らかにするには、さらなる研究が必要です。Thank you for your attention. I’d be happy to take any questions.
ご清聴ありがとうございました。ご質問をお受けします。
学会発表で使いやすい英語のつなぎ表現
英語の発表では、難しい単語よりも、聞き手を次の地点へ案内する表現が役立ちます。
| 場面 | 英語表現 | 意味 |
|---|---|---|
| 次へ進む | Let’s move on to … | 次に〜へ移ります |
| 要点を強調する | The key point here is … | ここで重要なのは〜です |
| 図表へ注意を向ける | Please take a look at this graph. | こちらのグラフをご覧ください |
| 言い換える | In other words, … | 言い換えると〜です |
| 予想外の結果を示す | Interestingly, … | 興味深いことに〜です |
| 前の内容へ戻る | As I mentioned earlier, … | 先ほど申し上げたように〜です |
| 要約する | To summarize, … | まとめると〜です |
これらは飾りではなく、聞き手の理解を助ける標識です。一つのスライドから次へ移るところ、結果から考察へ移るところなど、情報の境目に置きましょう。
発表原稿を「読める英語」から「話せる英語」へ変える
論文の英文をそのまま発表原稿へ貼り付けると、文が長くなりやすく、息継ぎや強調の場所も分かりにくくなります。口頭用の原稿は、次の基準で整えます。
- 一文につき一つの中心メッセージにする
- 主語と動詞を早めに出す
- 名詞が連続する表現を、動詞のある文へ変える
- 専門用語は残し、周辺の英語を簡単にする
- 息を吸う場所でスラッシュを入れる
- 強調する語だけを太字や下線で示す
たとえば、次のような長い文があるとします。
The purpose of the present study was the examination of the relationship between A and B under three experimental conditions.
口頭では、二文へ分けると処理しやすくなります。
In this study, we examined the relationship between A and B. We tested three experimental conditions.
意味を薄めずに、頭から理解できる順番へ変えています。難しい内容を説明するほど、周囲の文法はシンプルで構いません。
英語スライドは「読ませる資料」ではなく「話を支える画面」
スライドへ文章を詰め込むと、発表者も聞き手も文字を読むことに集中し、口頭説明が入らなくなります。各スライドでは、次の点を確認してください。
- そのスライドで伝える結論が一つに絞られているか
- タイトルだけでスライドの役割が分かるか
- グラフで注目してほしい部分が明確か
- 略語を初出時に説明しているか
- 発表原稿とスライドの文章が完全に重複していないか
英語表現の正しさだけでなく、数字の単位、軸、凡例、色分けが会場後方から読めるかも確認します。スライドに情報を残す場合でも、発表では「何が重要か」を選んで案内する必要があります。
学会発表の英語を身につける5段階の練習法
1.まず内容を見ずに日本語で説明する
原稿を書く前に、自分の研究を日本語で短く説明します。ここで筋道が定まらなければ、英訳しても分かりやすい発表にはなりません。
2.各スライドの要点を英語一文にする
スライドごとに「聞き手に持ち帰ってほしい一文」を作ります。その一文を中心に、必要な根拠や説明を足します。
3.原稿を見ながら声に出し、言いにくい文を直す
黙読で自然でも、声にすると詰まる文があります。発音だけを直すのではなく、文そのものを短くしたり、語順を変えたりしてください。
4.キーワードだけで説明する
全文原稿を少しずつ手放し、スライドとキーワードを見て説明します。毎回まったく同じ英文にならなくても、研究内容が正確に伝われば問題ありません。
5.時間・質問・トラブルを含めて模擬発表する
最後は、本番と同じ持ち時間で通します。途中で質問を入れる、スライドを一枚飛ばす、言葉が出ない状態から言い換えるなど、予定どおり進まない練習も加えましょう。国際学会に特化した質疑応答の準備は、国際学会の質疑応答で使う英語・想定質問25選で詳しく解説しています。一般的なビジネス発表については、英語プレゼンの質疑応答を準備する5ステップも参考にしてください。
学会発表で避けたい4つの準備
原稿を一語一句丸暗記する
完全暗記は、途中の一語が抜けたときに、その先まで出なくなる危険があります。意味の区切りとキーワードを覚え、複数の言い方で戻れる状態を目指します。全文原稿・キーワードメモ・暗記の使い分けは、国際学会で英語原稿を読むのはあり?で具体的に解説しています。
難しい学術表現を増やしすぎる
専門用語は必要ですが、一般動詞や接続表現まで難しくする必要はありません。show、find、compare、increaseなど、自分が安定して使える語を優先します。
発表練習を最初から最後まで通すだけにする
通し練習だけでは、苦手な部分を繰り返す回数が足りません。冒頭、方法、結果、締めを分け、詰まりやすい区間だけを集中的に練習します。
発音を直すことだけに時間を使う
通じる発音は大切ですが、内容の順番、文の長さ、間の取り方も理解しやすさを左右します。すべての音をネイティブのようにするより、重要語を強調し、意味の区切りで間を取るほうが実践的です。
学会まで1か月ある場合の準備例
| 時期 | 主な準備 |
|---|---|
| 4週間前 | 発表の5段階を整理し、各スライドの要点を決める |
| 3週間前 | 口頭用原稿を作り、言いにくい文を短くする |
| 2週間前 | 録音・時間計測・スライド修正を繰り返す |
| 1週間前 | キーワードだけで話し、想定質問にも答える |
| 前日・当日 | 冒頭と締め、数字・固有名詞、機器とファイルを確認する |
時間が短い場合も、発表原稿全体を完璧にするより、冒頭・研究目的・主要結果・結論を先に安定させます。国際学会全体の学習優先順位は、国際学会の英語が聞き取れない人の勉強法で整理しています。
英語の学会発表に関するよくある質問
発表原稿は全文用意したほうがいいですか?
最初の段階では全文を作っても構いません。ただし、本番までには要点メモでも話せる区間を増やしましょう。特に冒頭、研究目的、主要結果、締めは、原稿から目を上げて伝えられると安定します。
英語の発表原稿を日本語から翻訳してもいいですか?
下書きとして翻訳を使うことはできます。ただし、日本語の長い一文をそのまま英語へ移すと、口から出しにくい文章になりがちです。先に日本語を短いメッセージへ分け、そのあと英語にしてください。
英語力に自信がなくても学会発表できますか?
できます。必要なのは英語全般を完成させることではなく、自分の研究を説明する範囲を優先して準備することです。専門内容はすでに持っているため、それを短い英語へ変え、想定外の質問にも確認しながら対応できる状態を作ります。
質疑応答まで同じ原稿で準備できますか?
質疑応答には固定原稿より、質問の確認、短い結論、根拠、保留という型が役立ちます。急な質問に答えにくい場合は、英語で急に質問されたときの対応も参考にしてください。
まとめ|研究内容を、聞き手が追える英語へ組み直す
英語での学会発表は、難しい表現を増やす競技ではありません。研究の価値を、聞き手がその場で追える順番と英語へ組み直す作業です。
- 発表を出だし・背景・方法・結果・締めの5段階に分ける
- 論文英語を短い話し言葉へ変える
- スライドでは見る場所と重要な変化を案内する
- 全文暗記からキーワードによる説明へ移る
- 質疑応答とトラブルを含めて模擬発表する
研究開発職として使う英語全体を整理したい方は、研究開発職に必要な英語力と勉強法もご覧ください。
自分の発表内容に合わせて、聞く・話す練習をしたい方へ
学会発表では、一般的な英会話教材よりも、自分の研究テーマ、スライド、想定質問に合わせた練習が効果的です。be:RIZEでは、実際に使う場面と期限から逆算し、リスニングと発話練習を個別に設計しています。
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