国際学会のポスター発表では、準備した原稿を最初から最後まで読む場面はほとんどありません。相手の専門性や関心に合わせて、研究の全体像を30秒で伝えたり、図を示しながら2分で説明したり、そのまま質疑応答へ進んだりします。
つまり必要なのは「長い英語を暗記する力」よりも、短い説明を用意し、相手の反応に応じて伸縮させる力です。この記事では、声かけから説明、質問対応、別れ際まで、そのまま使える英語フレーズと練習法を紹介します。
ポスター発表は「短い説明を相手に合わせて伸縮する場」
口頭発表は決められた時間と順番で進みますが、ポスター発表は一対一または少人数の対話です。聞き手が途中で質問したり、特定の図だけ詳しく知りたがったりするため、一本道の原稿だけでは対応しにくくなります。
まずは30秒版と2分版を用意し、詳しい説明は質問に応じて足すのが基本です。口頭発表の構成や出だし・締めを準備したい方は、先に英語で学会発表するための構成・原稿・フレーズも確認してみてください。
ポスター発表の英会話は5段階で考える

| 段階 | 目的 | 使える英語 |
|---|---|---|
| 1.声をかける | 関心の有無を確かめる | Would you like a brief overview? |
| 2.概要を伝える | 研究の背景・目的・主結果を短く示す | Let me give you a quick overview. |
| 3.図で説明する | 相手の関心に合わせて詳細を足す | This figure shows our main result. |
| 4.質問に答える | 質問を確認し、必要なら考える時間を作る | If I understand correctly, you’re asking about … |
| 5.会話を締める | 感謝を伝え、次の接点を作る | Thank you for your interest. |
1.聞き手への声かけ・出だしの英語フレーズ
通りかかった人全員を強く呼び止める必要はありません。ポスターを見ている人と目が合ったら、自然に選択肢を渡します。
- Hi. Are you interested in [topic]?
こんにちは。[テーマ]にご関心がありますか。 - Would you like a brief overview?
簡単に概要をご説明しましょうか。 - Please feel free to take a look.
どうぞご自由にご覧ください。 - Let me know if you have any questions.
質問があればお声がけください。
聞き手が説明を望んでいない場合もあります。まず許可を取ると、押しつけがましくならず、その後の会話も始めやすくなります。
2.30秒で伝える英語テンプレート
30秒版では、背景・目的・最重要結果の3点に絞ります。方法の細部は、興味を持った相手から質問が出てから足しましょう。
Background: Previous studies have shown that [背景].
Aim: In this study, we investigated [目的].
Key finding: We found that [主結果]. This suggests that [意味].
たとえば次のように話せます。
Previous studies have shown that sleep quality affects cognitive performance. In this study, we investigated whether a short daytime intervention improves attention. We found a significant improvement in the intervention group. This suggests that even a brief intervention may be effective.
固有名詞や専門用語を詰め込みすぎず、「何を調べ、何が分かったか」が残る説明にします。
3.2分で説明するときの順番
2分版は30秒版に方法と主要データを加えます。次の5文を骨組みにすると、途中で質問されても現在地を見失いにくくなります。
- The background to this study is …(研究背景)
- Our research question was …(研究課題)
- We recruited / analyzed / compared …(方法)
- The main finding was …(主結果)
- These findings suggest …(解釈・意義)
最後に Would you like me to explain the method or the results in more detail? と尋ねると、相手の関心へ自然につなげられます。
4.図・グラフを説明する英語フレーズ
| 場面 | 英語フレーズ | 意味 |
|---|---|---|
| 図を示す | This figure shows … | この図は〜を示しています |
| 系列を示す | The blue line represents … | 青い線は〜を表します |
| 比較する | Compared with A, B showed … | Aと比べ、Bでは〜が見られました |
| 差を示す | The main difference is … | 主な違いは〜です |
| 観察結果 | We observed an increase in … | 〜の増加が観察されました |
| 解釈する | This result suggests that … | この結果は〜を示唆します |
| 注意を向ける | If you look at the right-hand panel, … | 右側のパネルをご覧いただくと〜 |
指で示すときは、先に図の場所を伝えてから結論を述べます。「どこを見ればよいか」と「何が重要か」を同時に話すより、聞き手の負担を減らせます。
5.途中で質問されたときの受け答え
ポスター発表では、説明の途中で質問されるのが普通です。最後まで話し切ろうとせず、いったん止めて対話へ切り替えます。
- That’s a good question. — いいご質問です。
- If I understand correctly, you’re asking whether … — ご質問は〜かどうか、という理解で合っていますか。
- Let me clarify that point. — その点を補足します。
- We controlled for [factor] in our analysis. — 分析では[要因]を調整しました。
- Would you like me to go into more detail? — もう少し詳しくご説明しましょうか。
学会発表後の質問に備える方は、国際学会の質疑応答で使う英語・想定質問25選をご覧ください。一般的なプレゼンQ&Aは英語プレゼンの質疑応答を準備する方法、突然の質問への対応は英語会議で急に質問されたときの対処法で解説しています。
質問が聞き取れない・分からないときの英語
聞き取れなかったときに推測で答えるより、短く確認する方が研究者として誠実です。
- Could you say that again a little more slowly?
もう一度、少しゆっくり言っていただけますか。 - Sorry, I didn’t catch the last part.
すみません、最後の部分が聞き取れませんでした。 - Do you mean [your interpretation]?
つまり[自分の解釈]という意味でしょうか。 - Could you rephrase the question?
別の言い方で質問していただけますか。
国や地域によって発音や話す速さは異なります。国際学会全体のリスニング対策は、国際学会の英語が聞き取れないときの準備法で詳しく解説しています。
答えが分からない・研究に限界があるとき
すべての質問に即答する必要はありません。分かっている範囲、分からない範囲、次に調べることを分けて伝えます。
- We haven’t examined that yet, but it’s an important question.
まだ検討できていませんが、重要なご質問です。 - I don’t have the exact number with me, but I can check it.
正確な数値は手元にありませんが、確認できます。 - One limitation of this study is …
本研究の限界の一つは〜です。 - That’s beyond the scope of the current study.
それは今回の研究範囲を超えています。 - We’re not ready to share those data yet.
そのデータはまだ公開できる段階ではありません。
未発表データや共同研究の機密情報は、その場の勢いで話さないことも大切です。「答えない」のではなく、共有できる範囲を明確にします。
会話を締める・交流につなげる英語
- Thank you for your interest. — ご関心を持っていただきありがとうございます。
- It was great discussing this with you. — お話しできてよかったです。
- I’d be happy to send you more information. — 詳しい情報をお送りできます。
- May I have your contact information? — ご連絡先をいただけますか。
- Please feel free to contact me after the conference. — 学会後もお気軽にご連絡ください。
ポスター発表は研究紹介だけでなく、共同研究や情報交換の入口にもなります。別れ際の一文まで準備しておくと、名刺交換や次の会話へ自然につながります。
本番に強くなる練習法
- 30秒版・2分版・5分版を作る
同じ研究を異なる長さで説明し、情報を足したり削ったりする練習をします。 - 図を指しながら録音する
視線がポスターに固定されていないか、図を示すタイミングと英語が合っているか確認します。 - 専門家と非専門家に説明する
専門用語の量と説明の深さを相手に合わせる練習になります。 - 想定質問をランダムに出してもらう
順番どおりの暗記から離れ、対話の途中でも答える力をつけます。 - 聞き返しも練習に入れる
質問を一度で聞き取れない状況をあえて作り、確認フレーズを反射的に使えるようにします。
研究開発職として実験結果や技術課題を英語で説明する機会が多い方は、研究開発職で必要な英語もあわせてご覧ください。医療分野の論文・学会対応については、医師に必要な医療英語で扱っています。
ポスター発表でよくある失敗
- ポスターの文章を上から順に読み上げる
- 最初から方法の細部へ入り、研究の目的が伝わらない
- 一つの長い原稿しか用意せず、質問で止まると戻れない
- 相手の反応を見ずに話し続ける
- 未発表データや機密情報をその場で共有する
流暢さよりも、聞き手と目線を合わせ、短く区切り、反応を確かめることを優先しましょう。
国際学会のポスター発表に関するFAQ
ポスターの横にずっと立っているべきですか?
指定されたコアタイムは、基本的にポスター付近で質問に対応します。離れる必要がある場合は、共同発表者と交代できるか事前に確認しましょう。
人が来ないときは英語で呼び込みますか?
無理に呼び込む必要はありません。ポスターを見ている人に Would you like a brief overview? と声をかける程度で十分です。
メモや原稿を見てもよいですか?
重要な数値や専門用語の短いメモは役立ちます。ただし文章全体を読むと対話になりにくいため、背景・目的・結果・意義のキーワードだけにします。
聞き手が複数いる場合はどうしますか?
新しく来た人へ一言でテーマを伝えつつ、先にいた人との会話を尊重します。区切りのよいところで Let me briefly summarize the main point. と要約すると合流しやすくなります。
英語が流暢でなくても大丈夫ですか?
完璧な英語より、研究の要点と図の見方を明確に伝えることが大切です。短い文、言い換え、指差しを組み合わせれば、対話は十分成立します。
まとめ:説明の長さを3段階で用意しよう
国際学会のポスター発表では、30秒で全体像を示し、2分で主要な方法と結果を説明し、相手の質問に応じて5分以上の議論へ伸ばします。原稿を一字一句暗記するのではなく、各段階の骨組みと定番フレーズを準備するのがポイントです。
「自分の研究内容を英語にしたが、本番で質問が来ると止まってしまう」「相手の専門性に合わせて説明を変える練習がしたい」という方は、英語コーチングGRITの無料カウンセリングをご利用ください。実際の発表資料や想定場面に合わせて、必要な練習を整理できます。






