この記事の結論 英語学習では、長時間取り組むこと自体が問題なのではありません。しかし、単語・文法・リスニング・会話が別々の課題になっていると、時間を増やしても実際の会話へつながりにくくなります。今のボトルネックを一つ見つけ、同じ言葉を「場面で理解する→短い骨格で話す→実際の音で聞く→会話で使い直す」と循環させることが、学習を前へ進めます。
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長く勉強すること自体が悪いわけではありません。ただ、同じ時間でも、単語・文法・音・発話が別々なら会話へつながりにくい。著書『あなたは英語に時間をかけすぎている』でも、量を増やす前に処理のつながりを見直すことを伝えています。
英会話スクール「b わたしの英会話」・英語コーチング「be:RIZE」創業者
「何時間勉強したか」だけでは、英語の変化を測れない
英語学習について調べると、「日本人には2200時間必要」「毎日2〜3時間は勉強したい」「短期間で伸びるには圧倒的な量が必要」といった言葉をよく目にします。 もちろん、英語を使える範囲を広げ、精度を高めていくには時間が必要です。何も練習せずに話せるようになる、という話ではありません。 ただし、学習時間はあくまで投入量です。同じ100時間でも、何をどの順番で処理したかによって、得られる変化は大きく異なります。- 単語帳の日本語訳を増やした100時間
- 文法問題の正解率を上げた100時間
- 内容を理解しないまま音声を追いかけた100時間
- 自分が使う場面を絞り、同じ言葉を聞いて、話して、直して、使い直した100時間
努力しているのに話せない人に起きやすい「4つの分断」
大人の学習者の多くは、英語の知識をまったく持っていないわけではありません。中学・高校で学んだ単語や文法が、断片的に残っています。 それでも会話で使えない背景には、学習したものが別々の箱へ入っている状態があります。1.単語と場面が分かれている
英単語を日本語訳との一対一対応で覚えると、テストでは意味を答えられても、実際の場面で取り出しにくくなります。 たとえば、getを「得る」とだけ覚えていても、get home、get tired、get better、get itを同じ感覚で使うのは難しいでしょう。会話で必要なのは、日本語訳の一覧ではなく、単語が場面の中でどのように動くかという感覚です。 英語の基本動詞とは?少ない単語で英会話が広がる理由では、少ない基本動詞を場面と結びつける考え方を紹介しています。2.文法と話す順番が分かれている
文法を理解していても、日本語の文章を最後まで完成させてから英訳しようとすると、会話では処理が間に合いません。 日本語では、相手と文脈を共有しながら、主語を省略し、最後の述語まで柔軟に情報を重ねられます。一方、英語では、まず「誰が・どうする」「誰が・どんな状態」と骨格を置き、必要な情報を後ろへ足していきます。 長く正しい英文を一度に作る前に、I think. / I need it. / She looks tired.のような小さな骨格を先に出す。この処理へ変えるだけでも、会話の停止時間は変わります。 具体的な練習は、英語は主語と動詞から始める|4コードで文の骨格を作る練習法と、日本語を英語に訳してから話す癖をやめるには?で解説しています。3.知っている単語と実際の音が分かれている
文字で見れば分かる単語でも、会話の音ではつながり、弱くなり、短くなります。さらに、一語ずつ日本語へ訳している間にも音声は先へ進みます。 この状態で音声を長時間流しても、「英語は速い」という印象だけが強くなることがあります。 大切なのは、聞けなかった原因を分けることです。- 単語そのものを知らなかったのか
- 知っていたが、音の変化に気づかなかったのか
- 文の骨格を前から追えなかったのか
- 日本語へ訳している間に次の音を失ったのか
4.練習と実際の会話が分かれている
教材の例文を言えるようになっても、自分の生活や仕事の場面で使わなければ、知識は教材の中に残ります。 また、オンライン英会話を受けるだけでも、毎回違う話題をその場限りで話していれば、うまく言えなかった表現を修正して再利用する回数が不足します。 「使う→詰まる→直す→もう一度使う」。この循環が、理解できる英語を使える英語へ変えていきます。英語の「処理設計」を変える4つのステップ
ステップ1.目標を英語全体ではなく、具体的な場面にする
「英語を話せるようになる」では、必要な単語も文法もリスニング素材も決まりません。 「海外出張の定例会議で1分間の進捗報告をする」「旅行先のホテルで希望を伝える」「初対面の相手と仕事や趣味について数往復話す」のように場面を絞ります。 範囲を狭くすることは、英語力を小さくすることではありません。最初に処理を動かす場所を決めることです。ステップ2.その場面で使う短い骨格とコア単語を選ぶ
難しい表現を集める前に、主語+be動詞、主語+一般動詞、主語+動詞+目的語という短い骨格を使います。 そこへhave、get、make、take、go、comeなど、意味の守備範囲が広い基本動詞を置きます。少ない部品でも、自分の場面に何度も使えば、英文を前から作る処理が育ちます。ステップ3.同じ内容を音でも確認する
自分が使いたい表現を、文字だけでなく実際の音でも確認します。音声を聞いて分からなかった場合は、再生回数だけを増やさず、音・単語・語順のどこで止まったかを見ます。 「話す練習」と「聞く練習」を別教材にしすぎず、同じ単語・骨格・場面を行き来することがポイントです。ステップ4.会話で失敗した英語を資産に変える
会話中に言えなかったことは、失敗ではなく、次に練習すべき箇所が見えたということです。- 言いたかった場面を思い出す
- 日本語の長い文章を、小さな事実へ分ける
- 短い骨格と基本動詞で言い直す
- 次の会話で同じ内容をもう一度使う
長時間の学習が悪いのではない
この記事のタイトルを見ると、「英語は短時間だけ勉強すればいい」という主張に見えるかもしれません。しかし、僕が伝えたいのはそういうことではありません。 英語が面白くなり、気づけば2時間、3時間と取り組んでいた。それはすばらしいことです。自分の専門分野で高度な会話をしたいなら、長期的な積み重ねも必要です。 問題は、長時間を義務にし、変化が出ない原因をすべて「時間不足」で説明してしまうことです。- 睡眠や仕事を削らなければ課題が終わらない
- 複数の教材をこなすだけで一日が終わる
- 学習時間は増えているのに、同じ場面で詰まり続ける
- 未達の課題が積み上がり、英語を開くのが怖くなる
僕も「もっと努力しなければ」と思い続けた7年間があった
僕自身、中学で英語の成績が学年最下位になり、大学では英語の単位を落としました。英会話教室へ通ってもついていけず、1か月で挫折。書店で教材を買い、通信教材にも手を出し、しばらくすると止まる。その繰り返しが約7年間続きました。 転機になったのは、努力できる人間へ生まれ変わったことではありません。英語を日本語の知識へ置き換えるだけでなく、場面と結びつけ、前から受け取り、前から小さく出すという処理へ学び方を変えたことでした。 そこから半年ほどで、以前は「???」だった会話の音が少しずつ意味として入るようになり、簡単な内容なら日本語の完成文を作らずに話せる場面が増えていきました。 その後、外資系企業で働き、米国でMBAを取得し、英会話スクールと英語コーチングを運営することになりました。しかし、僕が最初から英語のできる学習者だったわけではありません。 できなかった時間が長かったからこそ、「努力が足りない」で終わらせず、どこで処理が止まっているのかを見ることを大切にしています。この記事に関連する一冊
『あなたは英語に時間をかけすぎている』
2200時間神話、日本語と英語の処理の違い、4コード、100時間ロードマップまで、努力を実際の会話へつなぐ考え方をまとめています。





