英単語は書いて覚えるべき?何度も書いても定着しない理由

英単語を何度も写す学習から、思い出して書き会話で使う学習へ変える大人の英語学習者

こんにちは、しゅみすけ(大山俊輔)です。

「英単語は手で何度も書けば覚えられる」「口を動かしながら書くと運動性記憶に残る」と聞き、ノートを同じ単語で埋めた経験はありませんか。

書いた直後は覚えた気がするのに、翌日には意味が出てこない。単語帳なら答えられるのに、会話では使えない。これは、記憶力や努力が足りないからとは限りません。練習した動作と、実際に必要な取り出し方が違う可能性があります。

この記事では、英単語を「書いて覚える」ことにどんな効果があり、なぜ何度書いても定着しない場合があるのかを整理します。英会話で使える語彙へつなげる、書き方の具体的な手順も紹介します。

結論|書くことは有効。ただし「見ながら10回」より「隠して1回」

英単語を書くこと自体が、よい・悪いという話ではありません。書く目的と方法によって、得られるものが変わります。

書き方 主に練習していること 向いている目的
見本を見ながら繰り返し写す 文字の形と手の動きの再現 初めて見るつづりや文字列に慣れる
見本を隠して思い出して書く 記憶から単語を取り出す 意味やつづりの定着を確認する
自分の例文を作って書く 意味・場面・語順の組み立て 作文や英会話へつなげる
書いた文を見ずに声に出す 音と発話による取り出し 会話で使える状態へ近づける

大きな分かれ目は、ペンを使ったかどうかではありません。答えを見ながら手を動かしたのか、答えを隠して頭から取り出したのかです。

「書くと記憶に残る」は間違いなのか?

完全な間違いではありません。手書きには、文字を見て、形を捉え、細かな手の動きを調整し、書いた結果をもう一度見るという感覚運動の情報があります。

大学生を対象にした脳波研究では、キーボード入力より手書きのほうが、記憶形成や新しい情報の符号化に関係すると考えられる脳領域間で、広い接続パターンが観察されました。ただし、これは「英単語を手で書けば必ず長期記憶になる」と直接証明した研究ではありません。学習に適した条件が増えることと、目的の場面で思い出せることは別です。

一方、反復筆記を調べた実験では、図形の自由再生には効果が見られたものの、単語や音節などの記憶が一律に改善したわけではありませんでした。書く動作を含む形で思い出す課題には役立っても、別の取り出し方へ自動的に転移するとは限らないことが示唆されています。

参考:Van der Weel & Van der Meer(2024)手書きとタイピング時の脳接続Naka(1995)反復筆記が記憶へ与える効果

つまり、運動性記憶は存在しても、手が覚えた動きをそのまま英会話へ持ち込めるわけではありません。会話中は、ノートの行やペンの動きを再現するのではなく、場面を見て、言いたい意味を選び、音として口から出す必要があります。

何度も書いても英単語が定着しない5つの理由

理由1|見ながら写すと、思い出す必要がない

目の前にavailable=利用できると書かれた見本があり、それを10回写すとします。目は見本を追い、手は文字を再現できます。しかし、答えが常に見えているため、脳は「availableという音や場面から、意味やつづりを取り出す」必要がありません。

その場では流暢に書けるため、覚えた感覚は生まれます。しかし、見本を閉じた翌日に出てこなければ、練習中に成功していたのは主にコピーです。

理由2|回数を目標にすると、意味を処理しなくなる

「一語10回」と決めると、途中から目的が意味の理解ではなく、残りの回数を終えることになりがちです。文字は書いていても、場面・感情・使われる相手はほとんど動いていません。

単語学習で必要なのは、手の疲労ではなく処理の深さです。一回でも「どんな場面で、誰に、どんな語順で使うか」を考えたほうが、会話へつながる手がかりは増えます。

理由3|日本語訳との一対一だけを強化している

get=得ると何度も書けば、「getを見て、得ると答える」結びつきは強くなるかもしれません。しかし実際のgetは、get tiredget homeget a ticketI get it.のように幅広く使われます。

一つの日本語訳だけを固定すると、英文の中で別の意味に出会ったときに処理が止まります。基本動詞や前置詞は、訳語を増やすより、共通するコアイメージと場面をつかむことが重要です。

理由4|一日に集中し、後日取り出していない

同じ日に20回書くと、直後には書けるようになります。しかし、それは短い間隔で同じ動きを続けた結果でもあります。翌日、3日後、1週間後に見本を隠して思い出す機会がなければ、長期的に残ったか確認できません。

記憶から情報を取り出す検索練習は、繰り返し読むだけより長期保持を高めやすいことが、多くの研究で確認されています。少し忘れかけたときに取り出すことが、学習の一部なのです。

参考:Pastötter & Bäuml(2014)検索練習と長期保持

理由5|書く練習だけで、話す力まで評価している

英作文や試験のつづりが目的なら、書いて取り出す練習は目的に合っています。しかし英会話が目的なら、最後は文字を見ず、場面から音を取り出す必要があります。

書けるのに言えないのは、学習が無駄だったからではありません。書くルートは育ったものの、聞く・話すルートまで練習していないだけです。英単語を覚えても話せない理由でも、この違いを詳しく整理しています。

効果を変えるのは「書く量」ではなく、書く前後の処理

英単語を見ながら写す段階から、思い出して書き、自分の文として話す段階へ進む学習法
コピーから想起へ、想起から自分の場面での使用へ進めます。

同じ一回の筆記でも、次の三つは負荷も学習内容も異なります。

  1. 写す:見本の文字列を手で再現する
  2. 思い出して書く:意味・音・場面から単語を検索する
  3. 自分の文を書く:単語を語順の中に置き、意味を組み立てる

おすすめは、一つ目を必要最低限にし、二つ目と三つ目へ早く移ることです。つづりを間違えたら、見本を確認してもう一度隠します。正解を眺めたまま書き続けるのではなく、短い確認と想起を往復します。

英会話につながる「書いて覚える」5ステップ

ステップ1|単語を音と場面で確認する

最初に単語の音声を聞き、短い例文と場面を確認します。日本語訳だけでなく、その単語が何を表しているかをイメージしてください。

たとえばavailableなら、「利用できる」とだけ置かず、人の予定が空いている、席が空いている、商品が入手できる、といった共通する「使える状態」を見ます。

ステップ2|見本を閉じ、意味や場面から一回書く

単語と例文を閉じ、「予定が空いていると言いたい」と場面を浮かべてから書きます。思い出せなければ失敗ではありません。そこで答えを確認すると、自分の記憶の弱い部分が分かります。

ステップ3|自分が本当に使う短い文を一つ作る

例文を丸ごと写すのではなく、自分の生活へ変えます。

I’m available tomorrow afternoon.
Is this seat available?

難しい日本語文を先に作らず、主語+動詞の短い骨格から始めましょう。一語を自分の場面に置くと、会話中に思い出す手がかりが増えます。

ステップ4|ノートを閉じて、文を声に出す

英会話が目的なら、書いて終わりにしません。ノートを閉じ、先ほどの場面を見ながら文を言います。言えなければ、書いた文を短くしても構いません。

口を動かす価値は、単に筋肉を使うことだけではありません。発音・リズム・語順を含む形で、会話に近い取り出し方を練習できる点にあります。

ステップ5|翌日・3日後・1週間後に再び取り出す

復習日は、まず何も見ずに言ってから、必要なら書きます。つづりの確認が目的なら書く。会話での使用が目的なら話す。目的に合わせて出口を変えてください。

英単語が定着しない悩み全体については、英単語が覚えられない大人へも参考になります。

目的別|英単語はどこまで書けばよい?

目的 書く優先度 おすすめの練習
英会話 補助として使う 自分の短文を一度書き、閉じて声に出す
リスニング 聞こえない原因の確認に使う 音を聞いて単語や短いかたまりを書き取る
英作文・メール 高い 見本を隠し、語順とつづりを自力で再現する
試験・スペリング 高い 日本語や意味から英単語を書き、間隔を空けて再テストする
読むための語彙 必須ではない 文脈で意味を取り、必要語だけ想起練習する

すべての英単語を同じ方法で覚える必要はありません。見て意味が分かればよい受容語彙と、自分で話したい発信語彙を分けます。発信語彙に選んだものだけ、場面・語順・音まで深く練習すると負担を抑えられます。

よくある疑問

英単語は何回書けば覚えられる?

全員・全単語に共通する回数はありません。10回という回数を先に決めるより、一回確認したら見本を隠し、自力で書けるか試してください。書けた語をさらに9回写すより、翌日にもう一度取り出すほうが現在地を確認できます。

手書きとスマートフォンのアプリはどちらがよい?

つづりや文字の形を丁寧に覚えるなら、手書きには感覚運動情報を増やせる利点があります。一方、アプリは間隔を空けた復習や、移動中の想起練習を管理しやすい道具です。手段を競わせるより、手書きは深い確認、アプリは復習管理というように役割を分けるとよいでしょう。

声に出しながら書けば効果は上がる?

音と口の動きを加えられる点では有効です。ただし、見本を見たまま同じ音を繰り返すだけでは、会話中の想起とは異なります。一度確認したら隠し、場面から単語や文を声に出せるか試すところまで行いましょう。

筆者・大山俊輔(しゅみすけ)が「基本語を場面で使う」ことを重視する理由

私は約20年、大人の英語学習とコーチングに携わり、YouTubeでも基本動詞・前置詞・助動詞などを解説してきました。多くの学習者を見て感じるのは、書く量が足りないというより、すでに知っている基本語を、場面から音で取り出す練習が不足しているケースが多いことです。

たとえばhave・get・takeのような語は、つづりを間違える方が少ない一方、会話になると使い方が「持つ・得る・取る」に狭まりがちです。書いて固定した一つの訳語を増やすより、複数の場面に共通する感覚を理解し、自分の短い文で使うほうが、口語英語の土台になります。

基本語を場面から学び直したい方は、英会話の9割がわかるようになる基本動詞Top55も教材としてご活用ください。

まとめ|書くことをやめるのではなく、コピーを想起へ変える

英単語を書くことには、文字の形、つづり、手の動きを結びつける価値があります。しかし、同じ単語を見ながら何度も写すだけで、意味・音・場面・会話での取り出しまで自動的に定着するわけではありません。

英会話へつなげるなら、次の順番を意識してください。

  1. 単語を音と場面で確認する
  2. 見本を閉じ、思い出して一回書く
  3. 自分が使う短い文を作る
  4. ノートを閉じ、場面から声に出す
  5. 日を空けて、もう一度取り出す

見ながら10回書くより、隠して1回思い出す。書く作業を、記憶から取り出す練習へ変えると、同じ時間でも学習の中身が変わります。英単語学習全体の設計は、英単語の覚え方・選び方完全ガイドでも整理しています。


努力しているのに、覚えた英語が会話へつながらない方へ

「単語をもっと書くべきか」「音読へ移るべきか」「そもそも選んでいる単語が合っているか」は、目的と現在地によって変わります。学習量を増やす前に、どの処理で止まっているかを確認すると、必要な練習を絞りやすくなります。

be:RIZEでは、代表の大山俊輔(しゅみすけ)が、単語・文法・リスニング・スピーキングの現在地を確認し、目的に合う順番を一緒に整理しています。面談の内容を先に知りたい方は、be:RIZEの無料相談で行うことをご覧ください。サービス全体や資料は、be:RIZE公式サイトから確認できます。

 

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