会話で前に出た話や出来事を受けるとき、it・this・thatはどれも「それ・これ」と訳せます。しかし、英語では話題を共有済みのものとして受けるか、今ここへ引き寄せるか、少し距離を置いて指すかで選びます。
- I bought a new phone. It works well.
新しい携帯を買いました。それはよく動きます。 - This is what I mean.
これが私の言いたいことです。 - I passed the exam. — That’s great!
試験に合格しました。―それはよかったですね!
先に結論を言うと、itは共有済みの対象、thisは話し手の今ここへ引き寄せる対象、thatは相手の発言や少し離れた対象を指すのが基本です。
しゅみすけ(大山俊輔)
相手の話へ反応するときにThat’s great.が自然なのは、相手側から届いた内容をthatで指しているからです。日本語の「それ」に機械的に置き換えるより、話題との距離を見ると選びやすくなります。
it・this・thatの違いを一覧で確認

| 語 | コアイメージ | 会話での働き |
|---|---|---|
| it | 共有済みの対象 | すでに特定された物・事柄を受ける |
| this | 話し手の近くへ引き寄せる | 今示す物・これから言う内容に注目させる |
| that | 少し距離を置いて指す | 相手の発言・今聞いた内容へ反応する |
it|すでに共有されている対象を受ける
itは、話し手と聞き手の間ですでに何を指すか特定できる対象を受けます。新たに指し示す力は弱く、「例のもの・今話しているもの」を淡々と受ける代名詞です。
- Where’s my bag? — It’s on the chair.
私のかばんはどこ?―椅子の上です。 - I watched the movie. It was interesting.
その映画を見ました。面白かったです。 - Did you finish the report? — I sent it this morning.
報告書は終わりましたか。―今朝送りました。
名詞が一度登場し、同じものを繰り返し指すならitが基本です。新しい同種の物を表すoneとの違いは、one・onesとit・themの違いで確認できます。
this|対象を「今ここ」へ引き寄せる
thisは物理的に近い物だけでなく、話し手がいま提示する内容や、注目してほしい出来事を自分の領域へ引き寄せます。
- This is my new laptop.
これが私の新しいパソコンです。 - Listen to this.
これを聞いてください。 - This is important: back up your files.
これは重要です。ファイルをバックアップしてください。 - I can’t believe this is happening.
こんなことが起きているなんて信じられません。
thisは、これから言うことを導入するのにも向いています。This is the problem.と言えば、問題をいま目の前へ出して焦点を合わせる感覚です。詳しくはthisのコアイメージをご覧ください。
that|相手の発言や今聞いた話を指す
thatは、話し手から少し離れた対象を指します。会話では特に、相手がいま言った内容を指して反応するときに自然です。
- I got the job. — That’s wonderful!
仕事が決まりました。―それは素晴らしいですね。 - I can’t come tomorrow. — That’s too bad.
明日は行けません。―それは残念です。 - We need to start again. — That makes sense.
やり直す必要があります。―なるほど、それはもっともです。 - What do you mean by that?
それはどういう意味ですか。
相手の言葉は相手側から届いたものなので、thatで指すと自然です。thatのコアイメージで、物理的・心理的な距離も整理しています。
That’s great.とIt’s great.の違い
| 表現 | 自然な場面 | 焦点 |
|---|---|---|
| That’s great. | 相手から今聞いた話への反応 | 「その話は素晴らしい」 |
| It’s great. | すでに話題になっている物・経験の評価 | 「例のものは素晴らしい」 |
| This is great. | いま体験・提示している物への反応 | 「今この状況は素晴らしい」 |
- I’m getting married. — That’s great!
結婚します。―それはよかったですね。 - How’s the new job? — It’s great.
新しい仕事はどう?―とてもいいです。 - Look at the view! This is great.
この景色を見て。これは最高ですね。
どれも文法的には作れますが、状況との距離によって自然さが変わります。相手のニュースに返す定番はThat’s great.です。
That’s whyとThis is whyの違い
That’s why …は、直前までに出た理由を指して「だから〜」と結論へ進みます。This is why …は、理由を今ここで強く示し、「まさにこれが理由だ」と焦点を当てます。
- The train was delayed. That’s why I was late.
電車が遅れました。だから遅刻しました。 - This is why we need a backup plan.
まさにこれが、予備案が必要な理由です。
電話ではThis is …、相手確認ではIs that …?
電話では、話し手は自分をthis側に置き、相手をthat側に置く言い方があります。
- Hello, this is Shunsuke.
もしもし、俊輔です。 - Is that Emma?
エマさんですか。 - Who’s that?
どちらさまですか。
現代のアメリカ英語ではIs this Emma?も使われますが、This is …で自分を名乗る形は定番です。これも「自分側のthis・相手側のthat」という距離感から理解できます。
前の文全体を受けるitとthat
itもthatも前の内容を受けられますが、thatは相手の発言やひとまとまりの内容を「そのこと」と指す力が強く、反応表現でよく使われます。
- He may quit. I don’t like that.
彼は辞めるかもしれません。私はその話が気に入りません。 - He may quit. I heard about it yesterday.
彼は辞めるかもしれません。その件は昨日聞きました。
最初のthatは直前の内容を指して評価し、次のitは「彼が辞めるかもしれないという件」を共有済みの話題として受けています。
しゅみすけ(大山俊輔)
itは共有済みのラベル、thisとthatは指さしに近い働きです。thisは自分側へ、thatは相手側や少し離れた場所へ指を向ける。この違いが分かると、会話の反応がかなり自然になります。
天気・時間のitとは別の用法
I bought a bag. It is black.のitは、直前のa bagを指す普通の代名詞です。一方、It is raining.やIt is five o’clock.のitには、具体的な指示対象がありません。後者は天気・時間・距離の非人称itです。
よくある間違い
- 相手のニュースにIt’s great.だけで返す:文脈次第で可能だが、今聞いた話への反応はThat’s great.が自然
- 日本語の「これ・それ」だけで機械的に決める:物理的距離だけでなく会話上の距離を見る
- 一度出た同じ物をthisで受け続ける:共有済みならitが自然
- thatは遠い物だけだと思う:相手の言葉や直前の内容もthatで指せる
- 天気のitにも指す物を探す:非人称itには具体的な指示対象がない
中学英語で迷わず選ぶ3ステップ
- 同じ物を繰り返し受ける:it
- 今ここで見せる・これから言う:this
- 相手が言ったことへ反応する:that
まずはIt works.、This is important.、That’s great.の3本を場面ごと覚えると、細かい訳語から考えずに使えます。
理解チェック
- I bought a new camera.(It / That)works well.
- I passed the interview. —(It’s / That’s)great!
- Listen to(this / it). I have an idea.
- Where is the key? —(It’s / This is)on the desk.
答え:1. It 2. That’s 3. this 4. It’s。1と4は共有済みの物、2は相手の発言への反応、3は今から示す内容へ注意を引く表現です。
まとめ|itは共有、thisは今ここ、thatは相手側
- itは、すでに特定・共有された物や話題を受ける
- thisは、対象を話し手の今ここへ引き寄せて示す
- thatは、相手の発言や少し距離のある内容を指す
- 相手のニュースへの反応はThat’s great.が自然
- This is …は提示、It is …は共有済みの対象の説明
「これ・それ」という日本語訳ではなく、話題がどちら側にあり、すでに共有されているかを見てください。会話では、距離の感覚が代名詞の選択にそのまま現れます。
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