「英単語をたくさん覚えたのに、会話になると簡単な言葉さえ出てこない」
単語帳を何周もした。TOEICや英検のために語彙も増やした。英単語を見れば意味がわかる。それなのに、外国人を前にすると、知っているはずの単語を取り出せない。
この状態になると、「まだ単語数が足りないのでは」と考え、さらに難しい単語帳へ進みたくなります。しかし、話せない原因は、必ずしも知っている単語の数ではありません。
最初に結論をお伝えします。
英単語を覚えても話せないのは、単語を日本語訳との組み合わせで保存し、実際の場面から取り出す練習をしていないからです。会話で使えるようにするには、英単語を「意味」ではなく、「コアの感覚・場面・自分の一文」と結び直す必要があります。
はじめまして。しゅみすけ(大山俊輔)です。僕は20年以上にわたり、大人の英語学習をサポートしてきました。現在は、聞ける・話せる力に特化した英語コーチング「be:RIZE」を運営しています。
この記事では、英単語をたくさん覚えても話せない理由と、知っている単語を会話で使える単語へ変える具体的な覚え方を解説します。
「知っている単語」と「使える単語」は同じではない
次の英単語を見てください。
- have
- get
- take
- make
- go
どれも中学校で学ぶ基本単語です。日本語の意味も答えられるでしょう。
ところが、「今日は会議があります」「疲れてきました」「写真を撮りましょう」「決めました」を英語で言おうとすると、単語がすぐに出てこないことがあります。
- I have a meeting today.
- I’m getting tired.
- Let’s take a picture.
- I made a decision.
使われているのは、すでに知っていた単語です。それでも話せないのは、単語の知識がないからではありません。日本語訳を見て英単語を思い出す経路と、現実の場面から必要な英単語を選ぶ経路が異なるからです。
- 単語帳:日本語訳 → 英単語
- 実際の会話:場面・意図 → 英単語 → 文 → 音
単語帳では正解できても、場面から取り出す回路を使っていなければ、会話では止まります。
英単語を覚えても話せない5つの理由
理由1:日本語訳を一つだけ覚えている
英単語を覚えるとき、多くの人は次のような一対一の組み合わせを作ります。
- have=持っている
- get=手に入れる
- take=取る
- make=作る
最初の理解としては役立ちます。しかし、日本語訳を一つに固定すると、別の場面で同じ単語が出たときに理解できなくなります。
haveを「持っている」とだけ覚えていると、次の文が別々の熟語に見えます。
- I have a car.
- I have a meeting.
- I have a headache.
- I had a good time.
- I have no idea.
しかしhaveを「自分のところに何かがある・関わっている」という感覚で捉えると、物、予定、症状、経験、考えが同じイメージでつながります。
日本語訳は説明の一つであり、単語そのものではありません。
理由2:難しい単語を増やすことが語彙力だと思っている
語彙力というと、難しい単語をどれだけ知っているかを思い浮かべがちです。しかし、日常会話では、基本的な動詞や前置詞が何度も組み合わされます。
たとえば、次の英文はすべて簡単な単語でできています。
- I’ll get back to you.
- Can you take a look?
- Let’s make it simple.
- What’s going on?
難しい単語を100語追加しても、基本単語を一つの日本語訳でしか使えなければ、会話の自由度は大きく上がりません。
会話で重要なのは、語彙の高さだけでなく、少数の基本単語を何通りの場面で動かせるかです。
理由3:単語だけを孤立させて覚えている
単語帳では、単語が一列に並びます。しかし、実際の会話で単語は単独では出てきません。よく一緒に使われる語や文の骨格の中で使われます。
たとえばdecisionだけを覚えるより、次のまとまりで持つほうが会話で使いやすくなります。
- make a decision
- I made a decision.
- It was a difficult decision.
- Have you made a decision?
一語を覚えるときに、「誰が+どうする」という小さな骨格まで一緒に持つと、会話で置く場所がわかります。
理由4:自分と関係のない例文で覚えている
教材の例文は、意味や文法を説明するために作られています。英文として正しくても、あなたの生活に存在しない場面なら、使う機会はありません。
たとえば、次の例文を覚えたとします。
He took a bus to the museum.
普段バスにも乗らず、美術館にも行かない人にとっては、記憶の中で孤立しやすい文です。
骨格を残し、自分の日常へ変えます。
- I take the train to work.
- I took a taxi yesterday.
- It takes thirty minutes.
自分が見た場所、会った人、感じたことと結びつくと、単語を取り出す手がかりが増えます。
理由5:覚えた直後に「思い出す練習」をしていない
単語帳を見ながら繰り返すと、見覚えが強くなります。そのため、「もう覚えた」と感じます。
しかし会話では、答えになる単語は表示されません。何もないところから取り出す必要があります。
覚えたあとに本を閉じ、場面を思い浮かべ、声に出す。この動作がなければ、認識できる単語は増えても、思い出せる単語は増えにくくなります。
会話で使える英単語の覚え方:4段階
ステップ1:日本語訳ではなく「コアの感覚」をつかむ
コアの感覚とは、その単語がさまざまな場面で共有している中心的なイメージです。
たとえばgetには、「何かを得る」だけでなく、「ある状態や地点へ到達する」という動きがあります。
- get a ticket:チケットを得る
- get home:家に着く
- get tired:疲れた状態になる
- get better:より良い状態になる
- get ready:準備ができた状態になる
日本語では「手に入れる」「着く」「なる」と訳が変わります。しかし、getの側では「変化・到達」という動きでつながっています。
コアの感覚を持つと、初めて見る組み合わせでも、日本語訳を一つずつ暗記せずに場面を想像しやすくなります。
ステップ2:よく使う小さなまとまりで覚える
単語一語ではなく、会話でそのまま置ける2〜5語のまとまりを作ります。
getなら、次のような形です。
- get tired
- get home
- get a chance
- get better
- get ready
さらに、短い骨格へ入れます。
- I’m getting tired.
- I got home late.
- I got a chance to speak English.
- My English is getting better.
- I need to get ready.
こうすると、意味だけでなく、主語、時制、音まで一緒に保存されます。
ステップ3:「1語5場面」で自分の生活へつなぐ
一日に基本単語を一つだけ選び、その単語を使える自分の場面を5つ作ります。
haveを選んだ場合は、たとえば次のようになります。
- I have a meeting this afternoon.
- I have two brothers.
- I had coffee with my friend.
- I have a headache.
- I have no idea.
5つの英文を日本語訳として覚えるのではありません。それぞれの予定、家族、友人、症状、会話場面を頭に浮かべながら言います。
単語を記憶へ押し込むのではなく、日常の5か所に配置する感覚です。
この練習は、「英語を話せるようになるには?勉強しても話せない人に必要な3つの練習」でも紹介しています。
ステップ4:翌日、何も見ずに場面から取り出す
翌日は、英単語や日本語訳を見ずに、昨日作った場面を思い浮かべます。
会議の予定を思い浮かべて、I have a meeting this afternoon.と言う。友人とコーヒーを飲んだ映像から、I had coffee with my friend.と言う。
出てこなかった文だけ確認し、もう一度言います。
覚える時間より、思い出そうとする時間を作る。これが、単語を受け身の知識から会話の道具へ変えます。
基本単語をどう広げる?get・have・take・makeの例
get:変化・到達
- I got tired.
- It’s getting dark.
- I got home at eight.
- My English is getting better.
- Let’s get started.
getを「手に入れる」に固定せず、何かが動いて別の状態へ行くイメージで捉えます。
have:自分のところにある・関わる
- I have a question.
- I have time.
- I had a great weekend.
- I have a cold.
- We have a problem.
物を所有するだけでなく、予定、経験、症状、考え、問題などを自分の領域に持つ感覚です。
take:自分のところへ取り込み、運ぶ
- Take this.
- I took a taxi.
- Let’s take a break.
- It takes time.
- I took a picture.
日本語訳は変わりますが、何かを選び取り、その動作や経験を自分の側へ持ってくるイメージがあります。
make:力を加えて、ある状態を生み出す
- I made dinner.
- I made a mistake.
- That made me happy.
- Let’s make a plan.
- I made it on time.
物を作るだけでなく、結果、状態、計画、変化を生み出すときにも使われます。
この4語だけでも、YouTubeやショートのネタになるほど多くの場面があります。大切なのは訳語の一覧を増やすことではなく、中心の感覚から場面を枝分かれさせることです。
単語帳は使わないほうがいい?
単語帳そのものが悪いわけではありません。新しい単語に出会い、意味を確認し、復習するには便利です。
ただし、単語帳だけで学習を完結させないことが重要です。
単語帳を使う場合は、次の順番がおすすめです。
- 単語と基本的な意味を確認する
- 例文から、よく一緒に使うまとまりを見つける
- 自分に関係する一文へ書き換える
- 場面を浮かべて声に出す
- 翌日、何も見ずに取り出す
試験対策では、短期間に多くの単語を認識できるようにする学習も必要です。一方、会話で使うことが目的なら、すべての単語を同じ深さで学ぶ必要はありません。
読むための単語は意味がわかる状態、話すための基本単語は複数の場面で取り出せる状態、と役割を分けてもよいでしょう。
英単語が出てこないとき、会話中にできること
使える単語を増やしても、言いたい単語が出てこない場面は必ずあります。そのとき、沈黙して正解を探し続ける必要はありません。
簡単な言葉へ言い換える
appointmentが出なければ、I’m going to see my doctor.と言えます。exhaustedが出なければ、I’m very tired.で伝わります。
特徴や用途を説明する
単語が出ない物を、It’s a thing you use for…やIt’s like…で説明します。
相手に聞く
- How do you say this in English?
- What do you call this?
- I don’t know the word, but…
単語を思い出せないことは、会話の失敗ではありません。知っている簡単な英語で意味を運び続けることも、重要な会話力です。
1日20分でできる「1語5場面」メニュー
| 時間 | 練習 | 目的 |
|---|---|---|
| 3分 | 基本単語を1つ選び、コアの感覚を確認する | 日本語訳の固定を外す |
| 7分 | 自分に関係する5場面を作る | 生活と単語を結ぶ |
| 5分 | 場面を見ながら5文を声に出す | 骨格と音を一緒に保存する |
| 5分 | 英文を隠し、場面だけから言う | 会話と同じ方向で取り出す |
翌日は、新しい単語へ進む前に前日の5場面を一度思い出してください。5つすべて言えなくても構いません。出てこなかった場面こそ、必要な復習場所です。
会話で使えるようになったかを判断する4つの基準
- 日本語訳を見なくても、単語の中心的なイメージを思い浮かべられる
- その単語を使う自分の場面が3〜5個ある
- 肯定文だけでなく、過去や質問でも使える
- 実際の会話や独り言で一度でも使ったことがある
スペルと日本語訳を答えられるだけでなく、場面に合わせて形を変えられれば、その単語は使える語彙へ移り始めています。
毎日学習しているのに会話力につながらないと感じる方は、「英語を毎日勉強しても話せないのはなぜ?努力が会話力につながらない5つの原因」もご覧ください。
まとめ:単語数を増やす前に、知っている単語を場面で動かそう
英単語を覚えても話せない主な理由は、次の5つです。
- 日本語訳を一つだけ覚えている
- 難しい単語を増やすことが語彙力だと思っている
- 単語だけを孤立させて覚えている
- 自分と関係のない例文で覚えている
- 覚えた直後に思い出す練習をしていない
会話で使えるようにするには、次の4段階で覚えます。
- コアの感覚をつかむ
- よく使う小さなまとまりで持つ
- 1語5場面で自分の生活へつなぐ
- 何も見ず、場面から取り出す
英単語は、意味を知ったときではなく、自分の場面で取り出せたときに会話の道具になります。
まず今日はget、have、take、makeの中から一つだけ選び、自分の生活にある5つの場面を作ってみてください。難しい単語を新しく覚えなくても、すでに知っている一語から話せる範囲を広げられます。
中学英語の基礎そのものをどこから直せばよいか迷っている方は、「中学英語からやり直す社会人はどこまで戻ればいい?会話につながる5つの土台」も参考にしてください。
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